マキノの庭のミツバチ日記(30)




秋の蜂蜜絞り

秋になり様々の花が咲き乱れて蜜源に気を使わないで済む季節になった。そこで思い立ったのが蜜絞り。庭の巣箱はまだ一度も採蜜しないままできている。試しに巣箱を持ち上げてみると20キロを超える重さだ。ミツバチまもり隊隊長の小織さんを助っ人に頼んで、私と妻との3人で蜜絞りにとりかかった。採蜜開始は朝8時。天気は曇りで、今にも降りそうな空。

巣箱は箱枠(桝状の木枠)を4段に重ねて作られており、その内側に上下方向に伸びた板状の巣の本体(巣板)が7枚、平行に並んで収められている。箱枠の隙間に細い針金ワイヤーを食い込ませ、しごきながら手前にずらして引き切っていった。これで最上部の箱枠の部分を丸ごと取り出せた(写真1、2)。切り出した断面を見ると全て貯蜜域で、貯蔵花粉もここでは見当たらない。巣箱の下の方に位置するはずの育児域が無事に避けられていることが確認できた。7枚の巣板は切断面が霜柱のように見える。その間に見える7ミリほどの狭い空間が、まさに働きバチの職場にあたる。両側にぎっしりと並ぶ食料庫や保育所の小部屋(巣房)をまわって管理や世話をしたり、仲間と口移しで蜜交換をしたりで忙しい場所だ。

匂いがミツバチやスズメバチを呼び込むのを避けるため、箱枠からの巣板の切り出しは別の離れた所で行った。きれいな蜂蜜がたっぷり詰まった7枚の巣板を切り分けて取り出していく。濃い蜂蜜を収めた巣板の表面には白いシール(蜜ブタ)が貼られている。それをはがしていくと、琥珀色の蜜のドロリとしたしたたりがまぶしい。

逃げ遅れ蜜まみれで動けなくなり犠牲となった働きバチが10頭ほど巣板の隅に見られるのはいつものこと。巣板は小さな無数の小部屋(巣房)の集合体だ。その各小部屋に小分けして蜜を収め、ある程度濃くなったら蜜ブタで封がされる。そのような工夫のおかげで、働き蜂たちは普段は蜜の洪水に襲われることはないが、人間などの勝手な巣の破壊で蜜が大量に垂れ流れると、災害みたいな事態になる。このときハチたちは、巣箱の内部の切断部の修復やこぼれた蜜の回収に大忙しのはず。

取り出した巣板をいくらか砕いたものをリード紙で敷きつめた金ザルに積み上げ、ろ過されたきれいな蜂蜜を滴下させ桶に集めていく(写真3)。気温がまだ高い今頃でも、終わるまでに丸1日以上かかる。蜂蜜収穫量は3リットル(約3.5キロ)だった。今度の蜂蜜はいつもより濃くて粘性が高い。小さじにすくって口に含むと独特の香りが広がり、濃厚な甘みに伴う風味も好ましい。

過去の採蜜の経験では、人が巣箱をいじると警戒して激しく飛びまわるミツバチの一群がいたが、今回はあまり振動を与えない静かな採蜜作業だったので、思ったほど騒がれず。日ごろスズメバチを追い払うなど世話をする私の体臭も覚えていて、略奪を大目に見てくれたというのは、ちょっと思い過ごしかも。知り合いの養蜂家からは、蜜絞りの後でミツバチ一家に丸ごと逃げられたということをよく耳にする。その恐れはたしかにあるが、見たところミツバチ一家は平静に見える。翌日になっても朝早くから花粉や花蜜を運び込んでいる様子なので、とりあえずは安心。(タイサク)

ハニーウォークのご案内です。



10月22日(日) 10:00-15:00
ミツバチを通して自然を考える
※いきものふれあい室と共催

集合場所:マキノピックランド
内容:マキノ町を散策しながら、ニホンミツバチの飼育の様子などを見学し、ピックランド周辺の自然について学びます。
対象:小学生以上
定員:20名
費用:無料

お申込み方法
参加者全員の氏名・性別・住所・電話番号・ 連絡先(携帯・メール・FAX など)をご記入の 上、
メール、fax または郵便にて、いきものふれあい室までお申込みください。

宛先:〒520-1621 滋賀県高島市今津町 今津 1758 高島合同庁舎 南庁舎2F いきものふれあい室

イベント詳細についてお問い合わせ先 9:00-16:30(事務所・水、金)

TEL 0740-33-7990
FAX 0740-33-7991
メール:info☆greenwalker.com (☆を@に変えて送信してください。)

(先着順)定員になり次第、受付終了となります。

マキノ駅前おさんぽ市

10月15日(日)11:00~14:00 出店します。

販売品目は以下の予定です。
・雑貨フリマ(どれでも100円)
・高島市産はちみつ(百花蜜)
・ミツバチまもり隊オリジナルTシャツ
・みつばちチャーム(ドリーム・だんだん)
・みつばちストラップ(ぐりーんらいと)
・ハニカム刺繍ブローチ(Hedgehog needlework)
・ガーデンハックルベリーコンフィチュール(コンフィチュール樹樹)
・「マキノの庭のミツバチの国」(尼川タイサク著)

ご来場お待ちしております!

セレマ今津駅前会館出店コーナー

9月20日(水)10:00~13:00 出店します。

販売品目は以下の予定です。
・高島市産はちみつ(百花蜜)
・ミツバチまもり隊オリジナルTシャツ
・みつばちチャーム(ドリーム・だんだん)
・みつばちストラップ(ぐりーんらいと)
・ハニカム刺繍ブローチ(Hedgehog needlework)
・ガーデンハックルベリーコンフィチュール(コンフィチュール樹樹)
・自然農法の番茶(山本農園)
・ねり梅(国産有機)
・「マキノの庭のミツバチの国」(尼川タイサク著)

ご来場お待ちしております!

 

マキノの庭のミツバチ日記(29)

千鳥足(ちどりあし)のミツバチ・ダンサー

庭の巣箱は一応元気そう。先週には盗蜜かと思う一幕もあったが、今はかなり安定している。蜜源になるハギの花も咲き始めてきた。のぞき窓から巣箱の内を見ると、落ち着かない様子でダンスしながら巣板の上を這うのは、エサ探索から戻ってきた働きバチか。小回りの尻振りダンスをしながらも、一か所に止まるわけではない。ブルルッと体を震わせてせわしく進行方向を変えている。以前、米国シーリー博士がセイヨウミツバチでのダンサー(探索バチ)の動きを単行本の中で記しているのを読んだことがある。そのページの図には千鳥足歩きのような足取り(軌跡)が載っていた。

シーリーさんが言うように、巣のあちこちに待機中の仲間のなるべく多くに、尻振りダンスを限りある時間内に見せて回る(蜜源の情報を伝える)、という説明も納得がいく。踊りを広く宣伝するために動きまわる昆虫って他にあるだろうか?(挿絵はイメージ)

千鳥足という酔っ払いのおじさんの歩き方(いわゆる酔歩)は、赤提灯街で今でも目にすることがある。危うい歩き方のように思えるが、意外にも多くは首尾よく自宅に着いているらしい。しかし、目標を探し回る探索行動をとる場合、大方の現代人は秩序だった計画的な方法を採用する。たとえば、船が遭難し連絡を絶った時、広域での捜索活動は対象海域を細かく区画に切り分けて一つ一つしらみつぶしに探すのが常道。「行き当たりばったり」にランダムで無作為に探していく方法は公式には採用されない。同じ地点に戻ってしまい重複が生じることが多く無駄にみえる。だが、長い目で見ると(あるいは統計学的・確率論的に評価すると)、でたらめに見える千鳥足歩きだが探索行動としては最善策のものがあるそうだ。

少なからぬ動物では、獲物を探して動き回る行動がランダムであることが知られている。その動き方の一つには「レヴィ飛行(レヴィ軌跡)」と呼ばれるものがある。アホウドリの採餌行動を追った仕事から本格的な研究が進み、その後、サル、トナカイ、アザラシなど他の動物でも続々と見つかっている。昆虫ではアリ、ハエ、マルハナバチ、そしてミツバチについてもレヴィ飛行を行うとされる。

レヴィ飛行をすると言うとなんだかいい加減な行動のように思われるかもしれない。だがメリットがあるからそれが採用されている。ミツバチは熟知した土地についてはマップ(地図)が頭の中に出来ており、その範囲ならば目的地にほぼ最短距離で直行するという研究報告がある。巣でダンサーの尻振りダンスから位置情報を読んで現場に急ぐ場合も、同じく直行型になる。見知らぬ土地に来た場合についてはレヴィ飛行をとる。

では分蜂(巣別れ)の時に新しい住処の候補地を探すのはどうなのか。それぞれの探索バチはレヴィ飛行を採用するにしても、探索地域のある程度の区割り分担がなされているように思えるが、たぶんまだはっきりとは解明されていないと思う。これは面白い研究テーマであろう。

何千といる自分の家族と家事を分担して暮らし、迷わずに家に戻って来られるし、ダンスを千鳥足で舞ってエサ場を知らせるなど、ミツバチの行動は奥が深くて芸が細かい。ミツバチは本当に不思議で面白い昆虫だと改めて思う。(タイサク)
〔「日記」はしばらくお休みにします〕

マキノの庭のミツバチ日記(28)

巣門での争い(盗蜜バチが出現)

ニホンミツバチの巣箱では、暑い日には巣門付近にたむろする夕涼み集団が見られる。今日はなんだかその連中に落ち着きがない。近寄ってみると、あちこち数か所でミツバチ同士が争っている。激しいところは取っ組み合いみたい。組み討ち中の一組では、ついに一方が相手を大あごで噛み殺した。倒れた相手を抱え込んで遠くに放り出しに行くものもある。地上にはあおむけになった死体が5頭ほどころがっている。目ざといアリにすでに取り囲まれた亡骸もある。まるで戦場みたい。形勢は巣箱守備隊のほうが断然有利の模様。

最初は、セイヨウミツバチによる盗賊行為つまり盗蜂(盗蜜)かと思った。だが襲ってきたハチの体が巣箱の連中とよく似ていて、どうも同じニホンミツバチのようだ。念のため盗賊を捕まえて、後ろ翅の翅脈(しみゃく)をルーペで拡大し観察したところ、H字型の交差があることからニホンミツバチであると確認した。写真はまだバトルが収まってないときのもので、右上方では後ろから乗りかかって攻撃しているものが見えるし、左側でも取り囲まれたのがいる。だがこの時点では大勢が決していて、残念ながら迫力を欠いた写真しか撮れてない。

養蜂家は盗蜂といったり盗蜜といったりする。本来「盗蜜」という語は広い意味があり、花粉の媒介サービスを伴わずに花蜜を奪取することを言う。それをやるのが、鳥ではスズメ、昆虫ではアリやチョウ、特定外来生物指定で知られるセイヨウオオマルハナバチなど。しかしミツバチ同士であっても、場合によっては他の巣から貯蜜を失敬する。特に花蜜不足の頃には起こりがち。

セイヨウミツバチがニホンミツバチを襲うという話はよく耳にする。体のサイズがやや劣り性格的にも大人しいニホンミツバチが劣勢に立たされ、戦意すら失うと言われている。だが、蜜が十分に確保できる季節だと、そんな争いは少ないらしい。実際、私も双方を春頃に同じ庭で同時に飼ったことがあったが、お互いに侵略することはなかった。

今、庭にいるニホンミツバチは数も多くガードもしっかりやる強群で、なかなかスキをみせない。盗蜜となると後続部隊がまだ来るかもしれないと思い心配したが、その内に紛争は収まった。どこかの弱小コロニーが崩壊して、迷いバチが入り込もうとしたのだろうか。だが経験者によると、優勢な盗蜜者はしつこくて被害の側は壊滅に至るほどらしい。巣箱を遠くに移すか巣門を数日間閉じるなどの対応策が語られている。

夏枯れで花不足が心配だったが、近ごろになって巣箱の出入りが活発になった。空中の見えない回廊はラッシュを思わせるくらいになっている。持ち込まれる花粉は黄色のものが多い。散歩に出たときに偶然見えたのは、県道の両側に華やかな列をなすピンク色の街路樹。百日紅(サルスベリ)の木で、今や満開であった。その中の花に寄るミツバチやマルハナバチを見つけた。ニホンミツバチにとっては夏場の貴重な花粉源である。この時期、ヒマワリやキンカンがあればとても良い蜜源にもなる。これらの蜜源・花粉源をうまく分け合って仲間同士の争いをなんとか避けられないものだろうか。動物でも暮らしを全うするのはなかなか楽ではないなーと、ミツバチの日々の様子を見て思うことが多い。(タイサク)