マキノの庭のミツバチ日記(65)

蜂蜜の残留ネオニコ分析

8月に、ある食品検査機関に自家製蜂蜜 75グラムを送って、残留ネオニコ系農薬の分析を依頼していた。検査費用は私のささやかな小遣いをはたいての出費だったが、気になっていたことを払拭したかった。というのは、前にも日記に書いたが、一部の市販蜂蜜にネオニコがわずかながら残留しているという新聞記事を読んで、我が家の庭のニホンミツバチの巣箱から採取した蜂蜜に残留していないか、確かめたかった。

9月中頃にその蜂蜜の分析結果として 1枚の検査成績書が送られてきた。アセタミプリド、イミダクロプリド、クロチアニジン、ジノテフランなど 7種以上のネオニコ系農薬と代謝物について、いずれも蜂蜜中で 0.01 ppm 未満(*)とあっ た(写真)。国の残留基準をクリヤーしているので、食品として一応安心というところ。調べてもらったサンプルは 5月に採取して保存してきたもの。8月初めのネオニコ空中散布の後では採蜜していないが、それだとまた違う結果になったかもしれない。

ただ、今回の検査自体にも不満が残った。検査報告書にはエビデンス(分析データーなど)が全く添付されていなかった。分析結果のクロマトグラム(溶出ピークなど記したチャート)のコピーも見たかったのだが。検査に使用したとされる液体クロマト/タンデム MS 法は精度・感度が優れていて 1 ppb(0.001 ppm)の 下まで分かるといわれる。たとえば人尿中のネオニコを測ったという学術論文にこの測定法は採用されている。

ミツバチが日常的に摂食する蜂蜜中に、もしネオニコが ppb 程度のごく薄い濃度であっても含まれていれば、コロニーに悪い影響が出ることもあるという報告がある。私もニホンミツバチを飼っているので、検査において ppb の桁で具体的数字が出ているならば知りたいところであった。

分析元に電話で問い合わせて返ってきた説明では、測定の際に 0.01 ppm 未満の測定値の場合は生の数字を出さない設定になっているとのこと。その測定器の精度から見て当然もっと下の値まで示されると思っていたのが甘かった。依頼する前にその検出下限なり定量下限の値がどの辺に来るのかを聞いておけばよかったと悔やまれる。

蜂蜜は食品として一応安心といったが、他方で、国の現在のネオニコ残留基準が妥当かどうかで異論も出ている。ネオニコのような人(特に子供)への DNT(発達神経毒性)のリスクが疑われる新規の神経毒を扱う場合には、慎重さが求められる。最近、国内の残留基準に変更があり、アセタミプリドが 0.2 ppm と大幅に緩和されたこと(他のネオニコ系は依然そのままの 0.01 ppm)を知った。実際のところアセタミプリドについては上げざるを得なかった事情が、厚労省そして養蜂関係の業界の一部にもあるのかもしれないが。

しかし消費者の立場からいうと不安が残る。厚労省が残留基準を緩める方向に向かう(例によって?)のは、本末転倒ではないか?欧州(EU)などのようにネオニコを禁止ないし規制する方向に動くべきだと思うのだが。1検体を 2万円前後で測れるなら自治体や実力のあるNPOあたりではそれほど大きな負担ではないだろう。どんどん蜂蜜に限らず食品を検査して結果を広く情報提供してほしい。 (尼川タイサク)

(*、ppm=100 万分の1。1 キログラムの重量当たりでいえば 0.001グラム)

マキノの庭のミツバチ日記(64)

ハギの花が咲いて一安心

ミツバチが花粉採取でよく訪れる百日紅(サルスベリ)の樹も、台風 21号が過ぎるとき折れたり引き倒されたりと、散々な被害を受けた。近くの県道で百日紅の街路樹がおよそ 200メートルに渡って植えられていたところでは、倒木がかなりあり通行の邪魔とか見苦しいということもあって、全ての百日紅の樹が除去され整理されてしまった。他にも強風のために多くの草木がすり切れてみすぼらしい姿になったようにも見える。夏の蜜源不足も重なっているようでミツバチのこれからが心配だった。

だが、さすがに 9月も中旬になって、ハギやキバナコスモスの花が咲き出てきた。近くの知内川の堤の道にもハギの花が目立つ。散歩していて、そのこじんまりした茂みの一つに出くわした(写真1)。そこにミツバチが 20頭ほどで訪れて花蜜や花粉を集めている。多数のミツバチが嬉々として花々の間を採餌に飛び回っているのを観るのも、ミツバチ愛好家(?)としては、大きな楽しみでもある。

最初見たときはニホンミツバチもいたのだが、翌日見に行った時には、来ているのはほとんどがセイヨウミツバチだった(写真2)。体の大きくて強いセイヨウミツバチに押されて、ニホンミツバチは追い払われたのだろうか。ニホンミツバチのファンである私は少し残念。

蜜源が豊かに開かれるこの時期、どうしたことか蜜源ではないバラの葉やレタスの葉をニホンミツバチがかじるという珍しい行動があるらしい。養蜂家や農家の間では知られた現象と聞く。この行動が見られるのは、9月から 10月に限られている。かじられたレタスは商品とならず生産農家にとっては打撃となる。だがこの現象は未解明のままになっていた。

去年の秋だったか、日記を読んでくださっているある方から、レタスをかじる行動の意味についてお尋ねがあった。しかし私はそれを見たことがない。ネットで 探して出会った横井智之博士(筑波大学)の論文中の写真では、確かにかじっている様子が分かる(*)。私は残念ながら満足な答えを持ち合わせず、「ミツバチ が食糧としてではなく何らかの生理作用のサプリ(?)として、レタスなど植物の葉や花弁、土中の有機物やミネラルを摂取することはあり得ると思います。」と、珍妙な答えに止めていた。

だがそのあと、ニホンミツバチ研究家の菅原道夫博士(神戸大学)から頂いた私信に、レタスの中のミツバチを集合させる成分を探求中とあった。そしてこの秋、 その成果を学会で発表に至ったとの連絡を頂いた。

そのホヤホヤの情報はなかなか興味深い。菅原博士らは、微量成分の分析法(GC- MS)でもって、レタスの茎とミツバチ・ナサノフ腺のエーテル抽出液に共通して存在する成分を特定し、その特定の成分にハチが実際に誘引されることを実験で確かめている。

秋の時期に単独のハチが若い菊の葉やバラの葉をかじる行動が知られている。たまたまレタスの葉をかじったニホンミツバチが、レタスに含まれている成分(それはナサノフ腺にあるのと同じもの)に誘引され、多くのハチがレタスに集まるということらしい。

ミツバチが花蜜と花粉だけをエサとするだけでないことは知られているが、このレタスなどをかむ行動にも、ミツバチの持つ行動の奥深さ多彩さが感じられる。 (尼川タイサク)

(*横井智之「ミツバチ科学」26号 (3), 2005年)

マキノの庭のミツバチ日記(63)

ミツバチにも生きにくい環境になってきた

前回にも書いたが、猛威をふるった台風 21号が去った後、庭に巣箱で飼っていたニホンミツバチが逃げた。写真1は、空になった巣箱を横倒しにして内側を見たときのもの。はっきりした原因は不明だが、酷暑、台風、花蜜不足、スズメバ チのしつこい襲来などがトリガーになったと考えられる。

台風の前日までは、働きバチらはいつものように花粉を運び込んでいた。キイロスズメバチの襲撃があれば巣箱前面に 200頭ほど集合して、一斉に体を震わせ振身行動でもって対抗しているのを見た。逃去した日も朝方見たときは、門衛が固 めていたので私は安心していた。それが急に全部いなくなったと分かった時は、フェイントを掛けられたみたいに頭が混乱していた。

後で冷静になって考えれば、これはかなり前から準備され、産卵をやめ、蜂蜜や蜂児を整理していることは明白。巣房の幼虫についても、セイヨウミツバチのように食べてしまう(全部でなくとも)ことをやったかも。計画倒産ならぬ計画逃去をやられたみたいだ。しかし、昆虫の身でありながら、厳しい状況判断をしてこれほど組織的に転出を成功させるのは、すごく知能的で驚くべきことではないか。恐れ入りました。

庭に残ったもう一つの巣箱の居住者ら(台風通過後に一度だけ怪しい素振りをみせた)は、今は何気ない顔で花粉を運び込んでいてまだ「決行」に及んでない。 だが、私は疑惑の眼差しで「彼女ら」をちょっと睨んでやっている。

私はフェイスブック(FB)をやらないが、日記の記事を更新するたびにミツバチまもり隊の手で FB サイトに転載されている。日記への感想やコメントが時々だが担当者の手によって私の元に戻ってくる。今回は緊急避難ではなくて計画逃去ですとのご指摘をいろんな方からいただいた。さすがに飼育ベテランの方たちのコメントは光っている。多くの皆さんも印象深い逃去体験をお持ちのようですね!

もう一つコメントに関連して付け加えたいのは地震予知のこと。今回の逃去と北海道の地震とは無関係と私は思う。地震の前段階で地殻に圧力がかかり、ピエゾ効果で電磁気環境の異常が起こるらしい。ミツバチの体内に磁鉄鉱の存在が証明されているが、それがなくても、鋭敏な感覚系をもつので行動変化を起こすことはあり得る。ただし震源の近くでないとこれはない。阪神大震災のときはさまざ まの動物の異常が報告されている。熊本地震や今回の北海道地震のような直下型ではどうなのか。人口が少ないと目撃情報も限られるのでは。

我が家での逃去劇の一方で、以前に夏分蜂で養子に出した一群でも最近になって不幸なことがあった。箱を置いた今津町の山里で順調に暮らしていると聞いていたが、8月末にクマに襲われてコロニーが消滅とのこと。送られてきたメールの写真には、無残に巣箱が破られ蜂蜜を含んだ巣板は抜き取られている様子が見てとれた(写真2、3。是永氏提供)。7月にも、今津町の別の山際に置かれた巣箱がクマに襲われたと聞いている。この高島市内のあちこちでもクマが山を下りて里をうろつくようになった。

地震や台風、酷暑などで災害列島と化しつつある日本で、クマ、ツバメ、スズメバチに農薬ネオニコチノイド、大気汚染の PM2.5など様々のストレスが重なり、 ニホンミツバチにとっても生息環境はますます厳しいものになっているのを実感する。(尼川タイサク)

マキノの庭のミツバチ日記(62)

台風の猛威がミツバチに及ぶ

今季最強といわれる台風21号が近畿を縦断したのは 9月の 4日。21号は徳島県上陸後、神戸付近に再上陸、福知山を経て日本海へ抜けて行った。ちょうどその進路の近くにある我が高島市マキノ町では、午後になって強烈な暴風雨。やかましいほどの風の息吹があたりを威圧するかのよう。後になって高島市から、瞬間最大風速が35.5mと発表された。午後 3時あたりがピークだった。

湖のある南方から礫(つぶて)のように勢いよく飛んでくる雨粒。松の小枝が飛んではガラス窓にたたきつけられ、バシッと激しい音。かつてなかった雨漏りが窓枠のあちこちに生じた。浜を窓越しにのぞいてみると、これまで見たことのない波頭が近くを暴れまくる。すぐ近くの電柱の間に張られている電線が大幅に揺れてちぎれそうに見えた。そして 2時頃についに停電になった。ようやく夕方 6時になって風が弱くなり、雨も止んだ。台風は日本海に抜けたとラジオのニュースはいう。

5日朝、晴れあがった空の下に、台風がもたらした爪痕があちこちにあらわに見えた。すぐ前の湖浜に並ぶ松の大木の内、3本が途中から無残にも折れていた。 松や庭木からちぎれ飛んできた小枝や葉が道路やあたり一面に散乱し車も走りにくそう。聞くところによると、マキノ町の東にある海津のあたりは、電柱が折れたり老舗の屋根が吹き飛んだりして相当な被害が出たという。

私はニホンミツバチの巣箱を守るために、台風が来る前に巣箱の上からロープを掛けて、脇に杭でつっかえ棒にし、ブロックの重しをつけておいた(写真1)。そ の程度の準備であったが、2台の巣箱は嵐にも立ち続け持ちこたえてくれた。だが、残念なことが起きた。台風が去った翌日の 5日、裏庭の巣箱が静かになり出入りがない。あわてて巣箱を開けて調べると、もぬけの殻の有様。きれいな巣板 8枚が長く伸びているが、蜂蜜は 1滴も残されてなくて幼虫もいない。無数の空の巣房が無表情に並んでいる。(写真2)。

昨日はまだ大勢居たのを確認している。実際、写真1にはミツバチの門衛が 10頭ほどで門を守っているのが写っている。逃去確認の数時間前に撮られた写真なのだ。台風の風雨が箱に当たり、そして多分水が浸み込んできたのがいやで緊急避難に及んだのか。

実は、表庭に置いた巣箱にいるもう一つの群も怪しい動きをしていた。昼下がりに巣門付近で軽い時騒ぎがあるのは珍しいことではない。だが午前 11時前での騒ぎは大いに怪しい動きだ。外に出て飛び回るものがみるみる増えていった。時騒ぎの一線を越えて分蜂か逃去の時のように激しい動きに移っていくように見えた。唸るような音も聞こえてきたので、これはまずいと思いスプレーの水を噴霧させ、ハチに向かって掛け続けた。しばらくすると群は平静さを取り戻し、巣箱の中に戻っていったので少し安心。

夕方、約 30時間ぶりに停電が終わり通常の生活に戻った。それまではエアコン、 風呂、トイレ、洗濯機、IHに冷蔵冷凍庫が使えない。コーヒーミルもアウト。テレビ、パソコンももちろんだめ。情報はポータブル・ラジオに頼っていた。

波乱の 2日間が終わって明けての 6日、未明に北海道で最大震度7の大地震が起きたと報じられた。「昨日の逃去はまさか地震予知ではないよね」と妻 Yが言う。 もちろん私は即否定。でもあれは不気味なタイミングだった。(タイサク)

マキノの庭のミツバチ日記(61)

ミツバチは真似(まね)ができない?

ミツバチの巣箱を毎日見ていると、巣内労働や時騒ぎのような飛行訓練、ダンスによるコミュニケーションなどが整然と繰り返されている。そこでは高度の社会生活が繰り広げられているように思える。それを成り立たせるのは何であろうか。 単に本能だからということでは済まない。なにがしかの学習や合理的な意思決定の能力があるといわれる。

高等動物では、真似(模倣)をする能力があれば新しい行動様式が広まりやすいといわれるが、それが備わるのは霊長類かイルカなど海洋哺乳類、そしてせいぜい鳥類までとされてきた。ミツバチがいくら頑張ってもとてもその域に達しないだろうと。ところが、ミツバチよりサイズが大きいマルハナバチについての驚くべき研究報告が、ロンドン大学の研究グループによって公表されている。

2年前になされたマルハナバチを使った行動実験では、隠れていて取れない皿(砂糖水が乗っている)を、それに付いている長いヒモを引いて獲得することを覚えさせることに成功した。そのような道具的条件付けといわれる学習自体は昆虫にとって非常に難しい高度のものになる。それに続いて昨年には、マルハナバチが自然界にはない仕事を見まねで学習し、さらにそのやり方を自ら改良する知恵をもっていることをその研究グループが報告し(Science 誌、2017年)、たいへん話題になった。

実験の一つでは、黄色の小さなボールを転がしていきゴールに置けば砂糖水が褒美(ほうび)としてもらえるようなセットを用意した(イラスト)。ハチのような姿の蜂形モデル(人形ではなくて蜂形)が球を動かしていくお手本を見せると、すべてのハチが球を運ぶようになった(*)。

この他、隠した磁石を使ってボールのみをゴールまで動かしその様子をハチに観察させ、他方、別のハチでは何も手本らしいものは見せずに実験がなされた。これらの実験の結果、ハチは他のハチを観察することを通じて、最も高い学習効果を得ることが分かった。また、うまく訓練されたハチは、3個の球がある場合にゴールの最も近くにある球を使って早く仕事を終えるという知能的で可塑性のある驚異的な行動も示した。

この実験で用いられたのは、体中が毛に覆われてずんぐりとした大型の花バチのマルハナバチであったが、ミツバチにもひょっとしてそのような模倣する能力があるのかもしれない。巣内労働や飛行訓練、ダンス会話などは、先輩働きバチの行動の真似ができれば格別に能率的なはず。マルハナバチのように体が大きくないのでボールを転がすことは無理だが、なにかうまい実験システムを考えれば証明できないだろうか。

先の実験を担当した研究者によると、「マルハナバチや他の多くの動物には、このような複雑な課題を解決するための認識能力が備わっているものの、そうした行動を余儀なくされる環境圧がかからなければ、それが発揮されないのかもしれない」と話しているそうだ。要するにハチ(ミツバチも含め)にとっては、目下の環境の下での日々の暮らしで十分やっていけるので、かなり追い込まれなければ 新規なことをする必要も意味もないということなのか。(タイサク)

*、動画リンク https://www.youtube.com/watch?v=exsrX6qsKkA

マキノの庭のミツバチ日記(60)

女系社会を生き抜くミツバチたち

このところ、東京のある医大の裏口入学事件が話題にのぼり、そこで明らかになった女性差別の医学部入試は世間の人たちをあきれさせた。現役男子と 1浪、2浪男子の受験生には加点するが、女子受験生にはせず、恣意的に女学生の合格者を 3 割程度に抑えたという。見えないダブル・スタンダードだ。ある報道によると、「男性は力が強い、長時間働ける、出産がない」とみての女性へのハンディ付けだったという。もしその大学の合否判定委員に女性教員が1/3も居るようなシステムだったら、結果は変わっていたのではないか。

庭の2か所に置いている巣箱には、今のところニホンミツバチのコロニー(家族集団)が住み、それぞれ 1万近い人口(蜂口)をもつ。コロニーのほとんどを占める働きバチは雌であるが、女王バチが出す女王フェロモンにより、自らの卵巣の発達が抑えられ出産はできない。彼女らは、女王や兄弟姉妹の世話をし巣を守り維持する働き手として、多数が生み出されてきた。今朝も巣門をのぞくと、収穫に出るもの、巣箱内に涼風を送るもの、巣門をガードするものたちでにぎやかだが、間違いなくいずれも雌バチだ(写真)。雄バチは体が大きめで、複眼も大きく尻は縞がなく黒いので見分けられる。

社会性昆虫といわれても、もちろんミツバチは人とは大きく異なる社会にいる。そのコロニーに専門学校みたいなものがあるわけはない。だが仮にあるとしたら、 入学するのは雌だけになる。先の人間社会での差別の口実にされる「力が強い、 長時間働ける、出産がない」の優先条件をクリアーできるのは、ミツバチの世界では働きバチで決まりとなる。雄バチ(ドローンともいう)はもともと春から夏にかけてしか現れず、日ごろは他所のコロニーの女王バチの後を追いかけ交尾を狙うことしか関心がない連中だ。巣に戻れば「グウタラ居候」みたいで働きバチの厄介者になる。

ミツバチの社会では、年取った雌バチ(そういって悪ければ熟女バチ)が、危険で骨の折れる外回りの仕事(外勤)に出る。餌や必要なものを運び込むのはもちろん、新住処の情報ももたらし、尻振りダンス(8 の字ダンス)で公開討論に加わる。これもミツバチの社会が女系社会と言われる所以であろう。

ミツバチの研究がいろいろなされているが、その中で、以前、名古屋大の研究グループがセイヨウミツバチについて面白い報告をしている(Plos One 誌, 2007年)。それによると、ミツバチのコミュニケーション能力に関する神経系の発達は、 働きバチが熟女になった頃にようやく完成するらしい。直接に触角の中のジョンストン器官から神経信号を記録して調べたところ、日齢(羽化後の日数。人の年齢に相当)とともに発達することが分かった。以前書いたように、福岡大の研究者たちが脳内にダンス言葉を司る神経中枢を発見したことと合わせてみると面白い。ダンス言葉で会話ができるのは巣の内の誰でもというわけでなく、歳がいってベテランの外勤バチ同士ということになる。では雄バチではどうなのかというのも知りたいところ。

私もついに 75才になり後期高齢者の仲間入りとなった。これまでとは違う保険証を配布されて改めてちょう落(?)の身の現実を想う。だが老人も捨てたものじゃないかもしれない。ミツバチみたいに年を取ってから誘導される能力が出てくるかも。(タイサク)

「よつばつうしん」89号

「よつばつうしん」に活動紹介を掲載していただきました!
ありがとうございます☆

【ミツバチのように自然と共生する社会をつくろう!】

8年前、庭に群れ飛ぶミツバチを見て自分で飼ってみようと思い立ち、飼育法をネットで調べ始めました。その時に出会った映画が「ミツバチからのメッセージ」です。世界的に減少するミツバチ。映画ではネオニコチノイド系農薬の危険性、日本の農薬規制の緩さなどをドキュメンタリーで紹介していて、初めて知る内容に大きな衝撃を受けました。
そのことがきっかけとなり、より多くの人に伝えようと2013年に「NO!ネオニコたかしまの会」を発足。各地で「ミツバチからのメッセージ」上映会を行いました。(滋賀県内外で30回、参加者のべ467人)
2014年には、楽しく活動を知ってもらえるようにと「ミツバチまもり隊」を結成。仲間の協力を得て「おっきん!みつばち音楽祭」を高島市今津町の椋川で開催。手づくり感あふれるアットホームなお祭りは、親子で参加できる毎年恒例のイベントとなりつつあります。(今年はお休みでしたが・・・)
おかげさまで会の活動に共鳴していただき、自ら情報発信される会員も増えてきました。ネット上での「ミツバチ日記」配信や、子ども向けのオリジナル紙芝居の読み聞かせ。蜜ロウで作る食品ラップのワークショップ。蜜源になる花を増やす試み。巣箱づくり、などなど。
花の蜜と花粉だけを食べ、植物の受粉を助ける。他者の命を奪うことのないミツバチは、まさに共生社会のシンボルと言えます。「奪い合う社会ではなく与え合う社会」を実践するミツバチの社会からは、世界が抱える諸問題を解決するヒントが学べるでしょう。
わたしの住む高島市マキノ町でもニホンミツバチは激減し、ずっと飼えずにいたのですが、ようやく今年の春、庭に巣箱を設置することができました。
元気に蜜を運び、飛び交う姿がいつまでも見られるような環境を次世代へ引き継いでいけるよう願ってやみません。

マキノの庭のミツバチ日記(59)

今年も空からネオニコ散布

8月1日、この日は近所の水田への農薬による航空防除が予告されていた。稲穂を吸って斑点米を作るカメムシの駆除法として、毎年この時期になされる。庭の巣箱のニホンミツバチのことを思えば、できたらやめてほしい年中行事だ。朝7時頃から、ラジコン・ヘリが高濃度の殺虫剤を納めたタンクを抱えて近くに回ってきた(写真1)。私の庭に接する水田については、持ち主のご厚意で今年も散布対象からはずされたのは有難い。だが、ヘリでの農薬散布は広範囲に及びドリフト(空中浮遊分)の影響も無視できない。ニホンミツバチの行動範囲はほぼ4キロ四方に及ぶので、リスクがないとは断言できない。

働きバチを散布農薬から守るための対応策を昨日から考えていた。農水省が勧める巣箱の一時的移動も、この酷暑の中では危険だ。熱に弱いロウで出来た巣板は振動で落ちやすい。散布最中にはせめて巣箱からハチが出ないようにするしかな い。

当日の朝、私は 4時に起きた。日の出前でまだ薄暗く、気温は 25度近くまで下がっている。ハチたちは巣箱の内に戻っていると思ったが、実際に見に行くと、まだ 200頭ほどが箱の外にあふれて涼んでいる。もう一つの巣箱も同じ。やむを得ず、スプレーに入れた水を噴霧してかなりの部分を巣内に追い込んだ。ついで巣門を樹脂の網(メッシュ)でふさいだ。ハチは通れないが空気の出入りはできる。外に締め出されたものも 10頭ほどいたが見切り発車。さらに麻袋を巣箱にかぶせて、ドリフトが来た場合の被曝に備えた。

近くの水田への散布が終わったのが 7時半頃。しばらくは風向きなどの様子をみつつ、巣箱封鎖の解除のタイミングを待った。8時半になり思い切って巣門にはめこんだメッシュを取り去った。すると内側のハチが待ちかねたように出てきて外にいたハチたちに合流した。なかには離散家族同士の再会のようにハグのようなしぐさをしているのがいる。次には、採餌で青空に向かう働き蜂の流れができていった。

その後、10時頃に巣箱を見に行ったら、働きバチ 2頭が地面に降りて奇妙な徘徊をしていた。体を小刻みにけいれんさせながらでたらめに動き回っている(写真2)。指先で触って脅しても反応がない。このようなことはめったに見なかった光景なので気味悪く感じた。直接に今回の散布と関係があるのかどうかは言えないが、記録映画で見た農薬による急性中毒の時の症状に似ている。もう一方の巣箱では巣門の前のテラスに 2頭の死骸を見つけた。

一昨年の森林総合研究所などの研究発表によると、セイヨウミツバチに比べニホンミツバチは農薬特にネオニコチノイド系に対し感受性が高い、つまり一桁も薄い濃度でも害を受けるとある。しかもネオニコチノイド系農薬の内でも比較的安全と言われていたジノテフラン(商品名はスタークル)に最も弱いという。今日の無人ヘリが散布したのもこの類だ。写真3は昨年の散布時に撮ったものだが、機体両側の赤いノズルから噴出した霧状の液が白い影のようになって斜め後方に飛ぶのが認められる。このような散布過程で生じたドリフトがしばらく空間に滞留しあるいは拡散していくことを考えると、そら恐ろしくなる。(タイサク)

映画「みつばちと地球とわたし」7/29世界同日上映会 in 滋賀県高島市のご報告とお礼

異例の進路をたどった台風12号の影響で開催が危ぶまれた上映会ですが、当日の朝に警報が解除され、無事に実施することができました。
午前9時の時点で警報解除は近畿圏では滋賀県だけという「ミラクル」が起きたのも、ひとえに皆さんのご支援ご協力、上映会開催に向けての強い願いが叶ったものと感謝しております。

会場となった今津東小学校には、台風明けにもかかわらず、67名の方が来場されました。(大人48名、高校生以下17名、未就学児2名)
スタッフ11名と合わせると78名の参加者です。

当事業にかかる費用は多くの方からご寄付いただいたおかげで、収支差引5千円弱の出費で済みました。
この場を借りて、厚くお礼を申し上げます。
また、いつもボランティアで協力してくださるスタッフの皆さんのお力添えにも心より感謝しております。

一般に公開されるメジャーな映画ではなく、自主上映会が各地で同日に行われることは珍しいのではないでしょうか。
台風で中止となった会場もあったかもしれませんが、国内53会場と海外4会場の57会場で、同じ時間に同じ願いを持ったアクションを共有できたことの意義はとても大きいものだと感じます。

都合により映画を見逃した方、今後の各地での上映日程を下記リンクでご覧の上、ぜひお近くの会場へ足を運んでください。どうぞよろしくお願い致します。
http://www.heartofmiracle.net/schedule/schedule09.html

小織

マキノの庭のミツバチ日記(58)

木蔭の読書に 101冊目の本を!

めったにそういう機会はないのだが、7月の祝日「海の日」に、京都のレイチェル・カーソン日本協会関西支部のセミナーに呼ばれて、話題提供を行った。「ミツバチとネオニコチノイド系農薬」がテーマ。話としては、日ごろ「ミツバチ日記」で書いてきたことなどを少し詳しく説明した。

レイチェルは、DDTなど化学防除剤による環境汚染について警鐘を鳴らした本、 “SILENT SPRING”(1962年刊、訳本は『沈黙の春』新潮社)を書いたことで 世界中に知られ、世界を変えた 1冊の本と言われる。その彼女はもともと海洋生物学者で、著作『海辺』などは既に 50年代の米国でベストセラーになったほど。 海の生物や自然についての深味のある解説が、波の寄せるようなリズムをもった美しい文章でつづられている。レイチェルは、生物多様性や食物連鎖など生態学の知識はもちろん、当時としては新しい発がんの機構や生理学にも造詣があり、その能力は『沈黙の春』に開花した。

新潮社発行の新潮文庫の内から選ばれた「100冊の本」が毎年公表されてきた(今年選ばれたのは、上巻・下巻の本も数えて 110冊)。ほぼ毎回のように入っていた『沈黙の春』が今年は抜け落ちたと、協会関西支部の方は残念がる。だが、現代的な本によって 100選から押し出されたとはいえ、レイチェルの本はその価値を失わない。現在でも当時と似たようなことが繰り返されている。今問題のネオニコ農薬が、人にはほとんど無害と言われ「夢の農薬」とされてきた現実があるが、 DDTが登場当初は人に無害と言われてきたと彼女の本にもある。文明批判と言ってもよい彼女の警告は、今も、いやむしろ今の方が切実に響く。

一方、私が最も関心をもつミツバチの方に目を向けよう。ドイツで活躍してきたフォン・フリッシュ博士は、ミツバチのダンス言葉などの行動研究でノーベル生理学医学賞を授与されている。かつて、ミュンヘンで行った講演では、殺虫剤 DDTなど化学防除剤使用が、最終的に使用者(人類)をも犠牲にするとし、また原子力の平和利用といえども、私たちの生存空間の汚染を増大させる危険を内包していると語った。「人間は知能を持っていますが、しばしば、自分が作り出したものが、いかに理性を欠いたものであったかと気づくのに、遅きに失するのでありま す。」(「昆虫-地球の支配者たち」1958 年)。

博士の後に続いた研究者らにより、ミツバチが学習や記憶、複雑なコミュニケーションなどをなす高度の神経系をもつことが証明された。そのミツバチの微妙なところを知らずに、たとえ微量でもネオニコなどの神経毒を使えば、死に至らなくてもコロニーに影響を与え、悪くすると崩壊にいたる。今やその辺のことが見えてきた。

ところで、講演のなされた 1958年といえば、レイチェルが友人オルガからの手紙を受けた年にあたる。歯止めのない農薬散布により自然界に起こった危機に心動かされ、『沈黙の春』を書き始める動機になったと記された年だ。ちょうど同じ時期に2人の偉人が同様の警告を発していた。「自然に対しもっと謙虚に!」と いう警告から半世紀も経った今、なおその意味は大きく重くなってきている。

木蔭といえども暑すぎるこのごろ、クーラーのある部屋で命の危機を回避しながら、101冊目(あるいはもっと後?)となったレイチェルの本を読み返してみるのもいいかもしれない。(タイサク)