マキノの庭のミツバチ日記(5)

挿絵 ウツとニコチンと会議好き

人間臭いミツバチたち

人は、時として会議好きだったり、ニコチン中毒、あるいはストレスでうつ病になったりすることもある。それがミツバチにもあるかもしれないというと意外に思われるだろうか。

ミツバチの会議のことはすでに書いた(*)。ミツバチが社会的生き物としてコミュニケーションに熱心なのは無理ないことだ。異なる新住居候補地を探してきた探索バチ同士が、自分の物件(?)を宣伝して熱心にダンスで対抗するのは珍しくない。それが過熱すると、ライバルのダンサーを軽くつつく行為に及ぶ・・・ピューッと言うけん制音とともに。このことは、前に紹介したシーリー博士たちが科学誌ネイチャー(2012年)に発表している。

タバコ好きの人がニコチン中毒に陥るのは、禁煙思想の進んだ今日でもなくなってはいない。ところが、ミツバチもニコチンと悩ましい関係に陥っている。化学的にはニコチン系に属する殺虫剤ネオニコチノイドが、世界的なミツバチ減少の主な要因の一つと言われて久しい。こともあろうに、その新農薬にミツバチが惹かれる傾向があることが報告されて、私もだが多くの人が驚かされた(ネイチャー、2015年)。それまでは、ミツバチは農薬を感知して避けるという楽観的な見方もあったからだ。先の研究では、残念ながら逆に惹かれて毒を摂取してしまうという結果が出た。脳神経が依存症みたいな影響を受けるのだろうか。

犬や猫を飼っていれば彼らが感情をもつと感じる人が多い。だが昆虫であるミツバチが感情をもつとは想像もできないことだった。2011年に行われたミツバチの学習に関するある実験では、興味深い結果が出た。その実験は、薄い甘味と強い甘味の2種の糖液を、それぞれに着けた違う臭いをもとに飲むか飲まないか判断させるというものだったが、ゆるい床振動も加えられた。その振動自体はハチには無害の刺激だが、天敵スズメバチなどが物をかじるときの振動に似ていてストレス源になる。普段ならうまく応答できるハチであっても、振動ストレスがかかった場合、本当はちょっと飲んでみてもよいのにためらうという「悲観的予測」をする傾向があった。さらにその時のハチの脳内分泌物を調べてみると、ドーパミンなど3種の神経伝達物質の分泌が軒並み減少していた。これはヒトのうつ病時の現象に似ている。

他にミツバチには、過労死タイプや逆に怠け者がいるとか昔の姥捨てみたいなこと(死に際になったら自ら巣を出る)など、いろいろ人間臭い面があるといわれる。どうあるにしろ、庭のミツバチはわがよき隣人のように思える。(タイサク)
*マキノの庭のミツバチ日記(3)


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