マキノの庭のミツバチ日記(32)

花の命は短くて

『放浪記』の作者、林芙美子の詩に由来するといわれる「花のいのちは短くて苦しきことのみ多かりき」のフレーズはあまりにも有名だ。しかし、むしろこれは人よりもミツバチ(働きバチ)の方で言いたい切実な言葉なのかもしれない(「花」を文字通りにとるとして)。花蜜と花粉に生計を頼るミツバチは、花々が季節の移ろいとともに次々寿命を終えると、新しく咲く花を求めてジプシーをやり続けなければならない。秋も深まり花も少なくなるこの時期には一層気になることであろう。

だいぶ前、たぶん10月の中頃だったか、道端に黄色い小花を付けたアメリカセンダングサがいつの間にか茂ってきた。悪名高い外来種なので本来は引き抜いて駆除する対象なのだが、思いがけずにもその花にニホンミツバチが5頭ほどたかっているのを見つけた。我が家から近いところなので、「ウチの連中」だろうか。熱心に採蜜しているのが分かり、現金なもので私はその草を駆除する気になれなかった。しかし間もなくこの道端の草は刈り取られてしまった。そのあと、マキノ駅前の花壇にサルビアの真っ赤な花が咲いた時も、数頭のニホンミツバチが来ていたが、花が枯れる頃にはいなくなった。

巣箱を置いてある庭に、妻Yがミツバチのためにと植えておいたわずかなツワブキが花を付けた。アブやアオバエがさっそく来ているが、我が親愛なるハチたちはそれを横目に見ながらも、そそくさと西側へ飛び立っていく。何か大口の蜜源があるのだろうか。それではと、私も自転車でその方角を見当に花を探しに出てみた。川べりや空き地を占拠するように咲くセイタカアワダチソウの黄色い花は、盛りを過ぎて枯れかけているのが増えてきているが、それでも数は圧倒的に多く残っていて、おそらくはミツバチの蜜源としてあとしばらくは役立つのだろう(写真1)。しかしニホンミツバチが採蜜する姿をついに見出せず。働きバチはたしかに白や橙色の花粉を次々運び込んでいるのでどこかに蜜源があるはずだが、結局見つけられずに今回の探索を断念した。

ところがその翌日の散歩の途中、浜をめぐる遊歩道の脇にイモカタバミが密生しているところに行きあわせた。その群落の中にニホンミツバチが花蜜を吸っているのを発見(写真2)。よく見ると、仲間を呼び寄せたのか近くに5、6頭の姿が見える。群れで採蜜中のニホンミツバチを久しぶりに目にして、私は嬉しくなり写真を撮りまくった。距離からしてたぶん我が家の巣箱の住人らが出張してきているのだろう。

先ほどのアメリカセンダングサ、セイタカアワダチソウといい、それにイモカタバミといい、あちこちにはびこって嫌われ警戒される外来種植物だが、この花不足の時期に盛大に花蜜や花粉を提供してくれる。我が国古来のミツバチであるニホンミツバチが外来種の植物に命を支えられるというのも、何か皮肉めいた話だ。(タイサク)

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