マキノの庭のミツバチ日記(52)

どこからか来た分蜂群、松の枝で一夜を明かす

昼過ぎのこと、前の家の庭で騒ぎが起きたらしい。呼ばれて見に行くと、2千頭ほどのミツバチの群がほぐれながらも大きな円周を描きつつ飛びまわっていた。 ウチの巣箱のミツバチ嬢たちが遠征して暴れているのでは、と一瞬思い「お騒がせを…」と言いかけて思いとどまった。そんなはずはない、さっき巣箱をみたときは軽い「時騒ぎ」があり、それも終わっていたから。でも、大阪府のS先生から夏分蜂(*)が起きたとのメールをもらっていたことをすぐに思い出した。この地でも夏分蜂の季節になって、どこからか出てきた群れなのかもしれない。5分も経たないうちにその群れは庭の隣の砂浜に移動し、やがて松林の中の1本の樹の枝に集結して塊(蜂球)を作った。

その蜂球から時々2、3頭が出て行き、また逆に戻って来るのもいる。この連中は探索バチで、新しい住処候補を探しに出ているのだろう。ところでこれまで住み着いていた巣は一体どこだったのだろうか。たいていは蜂球を元の巣の近くに作るので、あたりの探せるところを当たってみた。怪しいと思ったのは浜に置かれた古い倉庫だ。管理が悪くあちこちに破れ目があり瓦も一部が落ちている。ミツバチの自然巣が出来ていそうな場所だ。ただ残留組のハチの出入りがあるかと探したが確認できなかった。

松の枝の蜂球を眺めているうちに、それが捕獲できそうな位置にあるように思えてきた。脚立(きゃたつ)と手網があればいけそうだ。ただ、すぐ近くの浜に子供連れのキャンプ客などが遊んでいる。分蜂の時のミツバチは概ね大人しいのだ が、それでも多数で飛びまわられるとパニックになる人も出てくる。ここは諦めざるをえなかった。

後は、この群れがいつどの方角へ飛び立つのか見届けようと30分を置かずに度々見に行ったが、連中は居座り続けてついに夕方になった。暮れてきてもハチたちの動きはなく、湖面の上に上った満月が、枝に眠る蜂球を見守るかのように柔らかい光を投げかけていた。

翌朝6時過ぎ、昨夜のハチが気になり松林を見に行ったら、まだ松の枝に静かに留まっていた。こんなに長逗留の蜂球をこの地で見たのは初めてのこと。これまでの経験では、たいていは30 分でどこかへ飛び去ってしまう。長くても4時間くらいが最長だった。しかし、前に神戸市にいたとき、JR灘駅の近くで植え込みのビワの木に蜂球が留まっているのを見つけたことがあったが、それは2日ほど動かなかった。時間をかけてよりましな候補地を選ぶのはよいが、長居をしすぎ るとスズメバチなどの天敵襲来や天候の悪化などのリスクも増えるので、兼ね合いが大事。ダンスで新居の最適候補を決める場合、同じくらいに魅力的な候補地 が複数あると選定の決着がなかなかつかず、出発までに時間がかかるといった例もあるとはいう。

飛び立つ瞬間を見たかったが、あいにくこの日は家族旅行に出る予定。後ろ髪を引かれる思いでその場を立ち去った。翌日の昼に帰宅するとすぐに見に行ったが、 蜂球は跡形もなく消えていた。どこに行ったのだろうか。多分じっくり候補地を選定して、気に入ったところに入居していったのだろう。(タイサク)

<* 夏分蜂=春の分蜂で生じた群から6、7月の頃にさらに起こる分蜂。孫分蜂ともいう>

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