マキノの庭のミツバチ日記(61)

ミツバチは真似(まね)ができない?

ミツバチの巣箱を毎日見ていると、巣内労働や時騒ぎのような飛行訓練、ダンスによるコミュニケーションなどが整然と繰り返されている。そこでは高度の社会生活が繰り広げられているように思える。それを成り立たせるのは何であろうか。 単に本能だからということでは済まない。なにがしかの学習や合理的な意思決定の能力があるといわれる。

高等動物では、真似(模倣)をする能力があれば新しい行動様式が広まりやすいといわれるが、それが備わるのは霊長類かイルカなど海洋哺乳類、そしてせいぜい鳥類までとされてきた。ミツバチがいくら頑張ってもとてもその域に達しないだろうと。ところが、ミツバチよりサイズが大きいマルハナバチについての驚くべき研究報告が、ロンドン大学の研究グループによって公表されている。

2年前になされたマルハナバチを使った行動実験では、隠れていて取れない皿(砂糖水が乗っている)を、それに付いている長いヒモを引いて獲得することを覚えさせることに成功した。そのような道具的条件付けといわれる学習自体は昆虫にとって非常に難しい高度のものになる。それに続いて昨年には、マルハナバチが自然界にはない仕事を見まねで学習し、さらにそのやり方を自ら改良する知恵をもっていることをその研究グループが報告し(Science 誌、2017年)、たいへん話題になった。

実験の一つでは、黄色の小さなボールを転がしていきゴールに置けば砂糖水が褒美(ほうび)としてもらえるようなセットを用意した(イラスト)。ハチのような姿の蜂形モデル(人形ではなくて蜂形)が球を動かしていくお手本を見せると、すべてのハチが球を運ぶようになった(*)。

この他、隠した磁石を使ってボールのみをゴールまで動かしその様子をハチに観察させ、他方、別のハチでは何も手本らしいものは見せずに実験がなされた。これらの実験の結果、ハチは他のハチを観察することを通じて、最も高い学習効果を得ることが分かった。また、うまく訓練されたハチは、3個の球がある場合にゴールの最も近くにある球を使って早く仕事を終えるという知能的で可塑性のある驚異的な行動も示した。

この実験で用いられたのは、体中が毛に覆われてずんぐりとした大型の花バチのマルハナバチであったが、ミツバチにもひょっとしてそのような模倣する能力があるのかもしれない。巣内労働や飛行訓練、ダンス会話などは、先輩働きバチの行動の真似ができれば格別に能率的なはず。マルハナバチのように体が大きくないのでボールを転がすことは無理だが、なにかうまい実験システムを考えれば証明できないだろうか。

先の実験を担当した研究者によると、「マルハナバチや他の多くの動物には、このような複雑な課題を解決するための認識能力が備わっているものの、そうした行動を余儀なくされる環境圧がかからなければ、それが発揮されないのかもしれない」と話しているそうだ。要するにハチ(ミツバチも含め)にとっては、目下の環境の下での日々の暮らしで十分やっていけるので、かなり追い込まれなければ 新規なことをする必要も意味もないということなのか。(タイサク)

*、動画リンク https://www.youtube.com/watch?v=exsrX6qsKkA

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