マキノの庭のミツバチ日記(64)

ハギの花が咲いて一安心

ミツバチが花粉採取でよく訪れる百日紅(サルスベリ)の樹も、台風 21号が過ぎるとき折れたり引き倒されたりと、散々な被害を受けた。近くの県道で百日紅の街路樹がおよそ 200メートルに渡って植えられていたところでは、倒木がかなりあり通行の邪魔とか見苦しいということもあって、全ての百日紅の樹が除去され整理されてしまった。他にも強風のために多くの草木がすり切れてみすぼらしい姿になったようにも見える。夏の蜜源不足も重なっているようでミツバチのこれからが心配だった。

だが、さすがに 9月も中旬になって、ハギやキバナコスモスの花が咲き出てきた。近くの知内川の堤の道にもハギの花が目立つ。散歩していて、そのこじんまりした茂みの一つに出くわした(写真1)。そこにミツバチが 20頭ほどで訪れて花蜜や花粉を集めている。多数のミツバチが嬉々として花々の間を採餌に飛び回っているのを観るのも、ミツバチ愛好家(?)としては、大きな楽しみでもある。

最初見たときはニホンミツバチもいたのだが、翌日見に行った時には、来ているのはほとんどがセイヨウミツバチだった(写真2)。体の大きくて強いセイヨウミツバチに押されて、ニホンミツバチは追い払われたのだろうか。ニホンミツバチのファンである私は少し残念。

蜜源が豊かに開かれるこの時期、どうしたことか蜜源ではないバラの葉やレタスの葉をニホンミツバチがかじるという珍しい行動があるらしい。養蜂家や農家の間では知られた現象と聞く。この行動が見られるのは、9月から 10月に限られている。かじられたレタスは商品とならず生産農家にとっては打撃となる。だがこの現象は未解明のままになっていた。

去年の秋だったか、日記を読んでくださっているある方から、レタスをかじる行動の意味についてお尋ねがあった。しかし私はそれを見たことがない。ネットで 探して出会った横井智之博士(筑波大学)の論文中の写真では、確かにかじっている様子が分かる(*)。私は残念ながら満足な答えを持ち合わせず、「ミツバチ が食糧としてではなく何らかの生理作用のサプリ(?)として、レタスなど植物の葉や花弁、土中の有機物やミネラルを摂取することはあり得ると思います。」と、珍妙な答えに止めていた。

だがそのあと、ニホンミツバチ研究家の菅原道夫博士(神戸大学)から頂いた私信に、レタスの中のミツバチを集合させる成分を探求中とあった。そしてこの秋、 その成果を学会で発表に至ったとの連絡を頂いた。

そのホヤホヤの情報はなかなか興味深い。菅原博士らは、微量成分の分析法(GC- MS)でもって、レタスの茎とミツバチ・ナサノフ腺のエーテル抽出液に共通して存在する成分を特定し、その特定の成分にハチが実際に誘引されることを実験で確かめている。

秋の時期に単独のハチが若い菊の葉やバラの葉をかじる行動が知られている。たまたまレタスの葉をかじったニホンミツバチが、レタスに含まれている成分(それはナサノフ腺にあるのと同じもの)に誘引され、多くのハチがレタスに集まるということらしい。

ミツバチが花蜜と花粉だけをエサとするだけでないことは知られているが、このレタスなどをかむ行動にも、ミツバチの持つ行動の奥深さ多彩さが感じられる。 (尼川タイサク)

(*横井智之「ミツバチ科学」26号 (3), 2005年)

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