マキノの庭のミツバチ日記(68)

セイタカアワダチソウの季節

近くの川の堤に咲いたセイタカアワダチソウが、鮮やかな黄色のベルト地帯を作り出した。ひと頃は衰えたと見えたこの群落に盛り返しが見られる。外来種で繁殖力の強い雑草として嫌われるセイタカアワダチソウだが、我が家のミツバチたちにとってはこの時期の主要な蜜源・花粉源となる。河原を探してみると、いたいた!やや風があって揺れる穂につかまるようにして、ニホンミツバチが花蜜を採っているのに出会った(写真)。近くには仲間のハチが数頭いるようだった。

セイタカアワダチソウといえばその侵略性で知られ、次々と先住民であったススキやブタクサなどを駆逐し陣地をあれよあれよという間に拡大していった時期があった。その武器ともいえるものが化学物質(ある種の脂肪酸)で、それを地中に放出して他の植物の生長を抑えるそうだ。このような化学物質を使った植物と植物の間の作用をアレロパシー(他感作用)という。一般にアレロパシーという場合、阻害作用だけでなく共栄的な作用(例えばコンパニオン植物)の場合もいい、また植物間だけでなく動物や昆虫に対する場合も含まれる。防虫効果のあるマリーゴールドを畑の傍に植えるのも、昔からある応用例だ。

セイタカアワダチソウが使った脂肪酸も、言ってみれば植物界の化学兵器だ。しかし自分たちが勝ちを収めて天下を取ると、あまりにも密集したために自らにその毒の害が向けられ、自家中毒により衰退の道に入ったと聞く。なんだか人の世にも見られるような寓話的な話だが。でも、この近所では昔ほどではないにしても、少し復権してきたのかもしれない。

ちょっと変わったアレロパシーとしては、助っ人を呼ぶ植物のケース。リママメの葉がナミハダニにかじられると、そこから揮発性の物質が放出されてハダニを食べる天敵チリカブリダニを呼び寄せる。このことがオランダの研究者によって明らかにされたのは 1980年代のこと。既にこの仕組みを利用してチリカブリダニそのものが生物農薬として販売されている。

最近話題になったアレロパシーの優れものにミントがある。ミントの臭いが近くの植物に合図を送り、食害をするダニなどの虫が消化不良を起こすタンパク質を葉に合成させる。それが昆虫による食害を結果として抑えることを東京理科大学の研究チームが発見し今年に発表した。実際に葉の細胞の内で問題のタンパク合成のもとになる RNA(リボ核酸)レベルの増大も確認されている。動けない植物ではあるが、中にはこんな手の込んだ奇策をとるものもいる。

ミツバチに寄生して害をなすアカリンダニを防ぐには、ミントの一種ハッカの成分のメントールがよく用いられる。最近、庭の巣箱の近くを徘徊するミツバチが日に1、2 頭いるのを見つけた。真夏には置くのを止めていた食添用メントールだが、今回気になって巣箱に入れることにした。ただ、ミツバチにとってその存在があまり好ましいものではないようで、メントールを上に置いたスノコの隙間を、蜜ロウでせっせと埋めて匂いが来るのを防いでいるように見受けられる。

ミツバチのコロニーに害を及ぼす農薬として問題になっているネオニコチノイド系殺虫剤は、ニコチンの仲間であり化学合成した神経毒だ。人へのリスクも心配されるその使用を止めるために、アレロパシーを用いた安全な生物防除の進展にも期待したいところだ。(尼川タイサク)

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