
ミツバチにもマスクが要るかも
冬ごもりの虫が地上に出てくるという「啓蟄(けいちつ)の日」も過ぎて 3 月 8 日が来た。この日は「国際女性デー」の日であるが、語呂合わせで「ミツバチの日」とも言うらしい(ついでに言うと 8 月 3 日は蜂蜜の日)。庭のニホンミツバチの巣箱はすでに防寒具も取り去られた姿となっていたが、この日には台座部分を新しいものに取り換えることにした。古い方には巣屑が溜っており、雨で湿ってこびりついていて、巣板を蝕むスムシを呼び込みかねない有様だった。
巣の下方を覗くと、こぶし大ほどに小さくなっているがハチの群は生き残っているようだ。働きバチの出入りはにぎやかとは言えない。それでも昼過ぎの少し暖かい頃には若いハチが出てきて飛行訓練をしていた。一方、私の目の前の石に止 まって、人目もはばからず(?)トイレをしては巣箱に帰っていくハチもいた。
閑散とした早春の庭にも春が寄ってきている。庭木のサクランボにはつぼみがはち切れそうになり開花への期待が高まる。とはいえ、若バチを迎える環境は芳しいものではない。このあたりでも環境悪化が進んでいる。まず蜜源となる花が少なくなった。巣箱からは少し離れているが道路沿いにあった山茶花の並木が、200メートルほどに渡って刈り取られているのには愕然とした。昨年秋の台風の後には、被害を受けた県道沿いの百日紅の並木がごっそりと伐採されて整理されていたのは知っていたが、同じ運命をたどったのだろうか?ここは冬の時期に頼りにしている数少ない蜜源だったからとても残念。レンゲ畑も毎年姿を消してきてい る。
冬の間澄んでいた空気にも濁りが見られるようになった。毎年、3 月から 5 月にかけての大気汚染の主犯は黄砂、花粉、PM2.5 だが、今やそれらが出そろった。最近話題に上がるのが PM2.5 という大気中の微小粒子状物質。大気中を漂う微小物質の内、粒子の直径が 2.5 マイクロメートル(マイクロは 100 万分の 1)以下のものをいう。大きさで比較すると人の髪の毛の太さの 30 分の1以下なので肉眼では見られない。
中国では石炭が暖房燃料の主力になっていて大量の発生源の一つだという。中国のお隣の韓国では、飛来した高濃度の PM2.5 で非常事態に。韓国メディアは 3 月 4 日、PM2.5 の緊急低減措置がソウル首都圏で初めて 4 日連続で発令されたと報じた。白く濁って見えるソウル市街地とマスク姿の人々の報道写真はインパクトがあった。その厄介な浮遊物は偏西風に乗って日本にも及ぶ。ここ数年、この滋賀県にも大陸から時々張り出してきた汚染帯に巻き込まれるようになった。私も最近では咳き込んだりタンが切れなかったりしていて、花粉症よりも PM2.5 の影響を疑っている。気管から肺に入っていく PM2.5 が呼吸器や循環器の奥に侵入して脅威を与えることは最近広く知られるようになった。
ミツバチがマスクを着けた姿(イラスト)は変?たしかに昆虫は人のような肺呼吸ではなくて気管系で呼吸するので、口の辺りをマスクで覆ってもナンセンスだ。胸と腹の両側に小穴のように開口している気門に装着することが必要(そんなマスクは今のところないが)。人について害が言われている PM2.5 だが、ミツバチについても害がない訳はないと思う。誰かその辺のことを研究している人がいるのだろうか?今はミツバチにもなにかと多難な時代だが、たとえ細々とでも生き延びて勢力回復に至ってほしい。(尼川タイサク)