マキノの庭のミツバチ日記(82)

春なのに消滅の危機

3 月 24 日朝、近くの山々に雪がかぶっている。先週は平地にも少しだが積もった。最高気温も摂氏 7 度前後で、風速も毎秒 5 メートルくらい。寒くて風が強いとミツバチはなかなか巣箱から出てこない。今頃には増えているはずの若バチもそれほどには目立たないし活動的でもない。長いことつぼみをつけたままであった庭のサクランボの木にやっと白い花が咲き、それが満開になって麗しい匂いで誘いをかけているというのにこの有様。

昨年、そのサクランボの木は今と同じ頃に花が満開になり、その時は数十頭のハチがすぐに漁りに来ていた。今は、ヒヨドリがその満開のサクランボの木に居座り、我が物顔に花を丸ごと食べまくる。妻 Y が腹に据えかねたように飛び出して行って盗蜜者を追い払うが鳥はまたすぐに戻って来る。

今年は暖冬と言われながらも冬将軍はこの地にまだまだ未練が残るような気配だった。翌日の 25 日も気温は明け方に氷点下になり霜が降りた。満開になっていたサクランボの花も一部は前よりも色褪せて見える。だが昼には天気が穏やかに。晴れ間がときどき現れては消える。気温は 12 度くらいに上がった。昨日まで手持無沙汰のように立ち尽くしたサクランボの木は、昼近くになってブンブンと心地よい羽音をたてるにぎやかな客の 20 頭ほどを迎えることになった(写真1)。

そのうちに気が付いたのは、どうも庭のニホンミツバチの巣箱での出入りがぼつぼつで低調な感じ。おかしいと思って巣箱の底にスマホを入れて写真を撮ったら、中のハチたちはほんのひと塊が巣板の間に見えるのみ。いつのまにか勢力が落ちてしまっていた。ミツバチは「超個体」と言われるように、分業をこなす多くの家族からなる有機的集団があって初めて一個体のようにして生き続けられる。今のこの劣勢の様子だと消滅は時間の問題かも。春を迎えコロニーが大きくなり分蜂(巣別れ)に向かうはずのこの時期だが、事態は思ったより深刻だ。我が家にたった 1 個だけ残った巣箱を失うことには無念の思いが湧く。たいへん残念だが現実を受け入れざるを得ない。

働きバチの寿命は普段は 1 か月ちょっとだが、冬場に限って 3 か月ほどに延びるといわれる。昨年暮れごろから無理して働いてきた子育て役の働きバチが老齢で次第に姿を消し、若バチの世話ができていないのかもしれない。一方で、翅に異常をきたし飛べなくなって巣箱から脱落していく老齢のハチも少数ながらいる。これらは寄生ダニ(アカリンダニ)の影響があるのかもしれない。また、女王バチの出産も不調で次世代の再生産がはかどらなかった可能性もある。個体数激減の原因を突き止めるためには巣箱から中の巣板まで外して巣房を点検してみなければ分からない。

だがまだ威勢よく羽音を響かせて外勤に向かうものや巣に帰還するのが少数ながらいる。それ等がいるかぎりは巣箱に手をつける気が起こらない。せめて短い余生を過ごしてもらうことにした。巣箱に住民がいなくなる日は近いかも。Y は「せめて最後は腹一杯食わせてあげよう」と言いつつ小皿に入れた蜂蜜をまるで「炊き出し」みたいに巣門へ差し出していた(写真2)。(尼川タイサク)

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