マキノの庭のミツバチ日記(85)

キンリョウヘン式トラップの威力を目の当たりに

庭でビワの木の実に袋掛けをしていたとき、傍らの妻 Y が、ブーンという羽音を聞いたように思うという。そこで、捕獲用トラップ(分蜂、つまり「のれん分け」、で元の巣を出てきたハチの群れを誘い込むためのもの)が置いてある庭先に急いだ。すると、トラップ内のキンリョウヘン(蘭の一種)の花に黒々と何か集っているように見えた。どこからか飛来したニホンミツバチの分蜂群が来ていたのだ (写真1)。はやる心を抑えてハチの塊を観察。女王バチを探しているうち、幸運にもせかせかと忙しそうに動き回る女王バチの姿を確認できた。働きバチより少し大きく腹部が黒くて長いので探し出しやすい(写真2、白矢印)。

この連中が蘭の花にいつまでも留まっていては困るので、蘭全体を軽く叩いて振動を与え続けると、ハチは少しずつ上方に移動していき、上に置いた巣箱の中に入っていった。ハチがほとんどいなくなった蘭は植木鉢ごと取り去って、巣箱をトラップの三脚から取り外し、持ってきた巣箱台座(基台)を箱の底に据えて、首尾よく群れをキャッチ。

ハチ友の井上さんから前にもらっていた新作の仕掛け(トラップ)であった(ミツバチ日記 83 記載)が、その鮮やかな分蜂群捕獲の様を目の当たりにして、あらためて驚かされた。分蜂で巣立ったニホンミツバチをその特有の香りで惹きつけるというキンリョウヘンの鉢の上に、待ち箱(底板をはずしている)を置いていたのだった。

今回捕らえた家族集団(コロニー)は個体数がちょっと見た感じではそう多くない。ミツバチの分蜂では、まず母親女王が巣の働きバチの約半数(プラスいくらかの雄バチ)を連れて出て行く第一分蜂が起き、ついで娘女王で長女が残りの半数、さらに分蜂が続くと次女・・・といった具合に、次第にお供の手勢が少なくなる。この群れも恐らくは第二ないし第三分蜂などであろう。

実は、前の日にもちょっとしたハチの騒ぎがあった。例のトラップの蘭の花のあたりに、止まったり激しく飛び回ったりする 10 頭ほどのニホンミツバチを目撃した。一方で、あたりを興奮したようにでたらめに飛ぶハチが数頭。これは分蜂群が来る前の先遣隊みたいなものかと大いに喜び、本隊の到着を期待した。だが、その騒乱は 40 分もするうちに収まり、誰もいなくなった。肩透かしというか「ぬか喜び」に終わって、残念な気分が少し残っていたが、また来るかもという淡い期待はあった。それが、翌日に来たのだった。先遣隊が巣にもどって報告し、今日になって審議の結論が出て、後は迷わずに皆で「粛々と」やってきた、と言うのは少し出来すぎた話かもしれないけど。

妻から日ごろ「ミツバチ溺愛(できあい)隊」と揶揄(やゆ)される私だったので、ミツバチが越冬に失敗して庭にいなくなってからは落ち込んでいた。それが、有難いことに先月に井上さんが琵琶湖対岸からわざわざニホンミツバチのコロニーの入った巣箱を届けて下さった。おかげで、「空の巣症候群」(これが本当の?) は解消していたが、分蜂群を捕まえたいという欲求は消えていなかった。

今回捕獲できたコロニーは、同じく「空の巣症候群」みたいだった小織さん(ミツバチまもり隊)に譲ることにした。小ぶりの集団なので先行きがちょっと心配だが、女王は活発そうなので何とかやっていけるだろう。(尼川タイサク)

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