マキノの庭のミツバチ日記(49)

サクランボの木がたわわに実るころ

裏庭に置いているニホンミツバチ巣箱の巣別れ(分蜂)も終わり分蜂群捕獲の用がなくなって、表庭にキンリョウヘン(蘭)の鉢を放置していた。すると、そこにポツリポツリとではあるが他所からの訪問者があった。まぎれもなくニホンミツバ チだ。傍に空の巣箱を置いたら(写真3)それに関心が移ったのか、内部に入り込みじっくりと点検するものもでてきた。

引っ越し準備中のどこかの巣(あるいは蜂球)から来たと思われる偵察バチが、空からカーブを描きながら直接に箱の巣門へ飛び込むのを目にすることもあった。 ここまでくると、ひょっとしてミツバチ一家の転居先になるかとの期待を抱いたが、後が続かず引っ越しはなかった。残念ながらミツバチの「新居選択会議」で 不採用になったのかも。

凋落(ちょうらく)を始めたキンリョウヘンの花に代わるようにして、裏庭のサクランボの木に実がつき、鈴なりになって赤く熟れてきた(写真1、2)。こんな に豊かに実ったことは近年なかったこと。昨春には近くに巣箱が置かれてなかったのだが、今年3月のころは庭のミツバチ外勤部隊が入り込み活躍していた。それで、受粉が十分にできて文字通り実を結んだのだろうか。赤と緑の補色が鮮やか。赤色がちゃんと認識できる鳥たちの目を惹くはず。実際、実をついばみに来 る鳥たちでにぎやか。そして我が連れ合いまでもが、ジャム作りめざして小鳥た ちと熟れた実を取り合うのに忙しい。受粉が必要な時機にはミツバチたちを惹きつけ、実がたくさん生る(なる)とこんどは小鳥たちに食べさせて種を遠くまで 運ばせる。サクランボのその生物学的戦略はみごとに当たっている。

以前、サクランボがその白い花を咲かせた 3月の頃、EFSA(欧州食品安全機関) が、ハチ類に害を与えるネオニコ(ネオニコチノイド系農薬)について評価報告書を出したことを書いた(「マキノの庭のミツバチ日記(43)」)。その後日談になるが、4月27日に、ミツバチ(ヨーロッパ在住の?)への朗報がもたらされた。 EFSA が公開した科学的調査結果の答申を尊重して、EU の執行機関である EU 委員会は、28か国の投票によりネオニコ 3 種の屋外使用禁止(暫定ではなく)を決定した。禁止の内容については、まだ不完全・不十分な点が指摘されるが、長 年の懸案が解決方向に動いたのは歓迎すべきこと。

以上はヨーロッパ(EU)内の動向であるが、ネオニコはグローバルに使われていて、EU だけでなく米国やお隣の韓国においても、いくらかの規制がなされてきた。今後、ネオニコ規制の傾向は一層加速されると思われる。ただし日本国内で 問題解決に動くかどうか。これまでの関係省庁や自治体、農業界、マスコミの対応状況・経過をみると、決して楽観は許されない。(タイサク)

マキノの庭のミツバチ日記(48)

分蜂祭を終えて宿題もらう

春の分蜂(巣別れ)の時期も終わった。今年の春3回の分蜂は、個人的には年に一度のワクワクするお祭り騒ぎだった。だが後に気になることがいくつか残され た。

1つは、分蜂と音の関連についての関心が呼び起こされたこと。セイヨウミツバチでは、羽化したときの新女王の鳴き声が次の分蜂開始を知る手掛かりになるらしい。最近、ハチ友の井上さん経由で、友人の養蜂家が記録した処女王バチの鳴き声の貴重な録音コピーをいただいた。そのセイヨウミツバチ女王は、鶏の鳴くようなかん高い威圧的な音を発する。シーリー博士の本(*)でも、最初に羽化した処女王がプープーと高い音で鳴き、まだ王台の中にいる妹がガーガーと低い音で応えるとある。この姉妹の間の「会話」のあと、平和な巣別れ(第2分蜂など)に至ったり覇権を掛けた身内殺戮になったりするというドラマチックな展開は、多くの人に語られてきた。

今回の分蜂時に巣門付近でマイクに拾い集めたにぎやかな音には、普段と違う高い音(高周波)が乗っているように思えた。シーリー博士の本にも、分蜂への飛行に備えて、働きバチが高い音を出して周りの者たちを飛行態勢にもっていくといった記述がある。先の女王の鳴き声のような情報は望むべくもないが、分蜂の真最中の音データの解析は、時間がかかってもやってみたい。

2つ目は、出て行った分蜂群の「その後」について思うこと。三女にあたる新女王が受け継いだ「本家」巣箱は、今のところ安定している。盛んに花粉を抱えて働きバチが戻っているので、産卵が順調のようだ。もちろん、婚姻飛行も無事終えたのだろう。この時期はツバメの活動も盛んで、ミツバチは格好のエサであり、 特に飛び方の遅い女王は捕食される危険がある。女王がツバメに捕らえられれば もうコロニーは続かない。ツバメさんたち、どうぞお手柔らかに!

今回の分蜂群でその行方がはっきり分かっているのは、前に書いたようにミツバチまもり隊小織さんの家に引き取られた一群。既に分蜂時から3週間は経っている。その巣箱の中の様子が分かるメールが送られてきた(写真=分蜂から1週間 の時点のもの。小織氏による)。巣箱の下方からスマホを入れて撮影したもので、鮮明に撮れている。中央付近に黄色の盛り上がりがあり、巣板がかなり出来ているのが分かる。群れの中にところどころ黒い腹部が見えるのは雄バチ。女王の姿が見えないが、産卵で巣の奥に入り込んでいるのだろう。我が庭から出て行った群れでも、このように消息が分かり成長を見ることができるのは楽しい。

巣別れで出奔し行方知らずのものたちはどこでどうしているのだろうか。出て行った方向としては北の方というのが大体は共通している。その方向に山があるのでそこに行ったのかもしれない。だが、町の中に留まっている可能性もある。マ キノ町海津では、数年前のことだが、空き家の縁(えん)の下にあったニホンミツバチの自然巣を熊が襲ったことがあったが、空き家のため発見が遅れた。県下でも近年は空き家が増えて管理上の問題になっているところもある。人の干渉がなく荒廃していく家屋はミツバチにとって都合よい隠れ家だ。近ごろでは、空き家(特に廃屋)の前を通るときには、ミツバチの姿がないかとつい熱心に観察してしまう。(タイサク)

<* シーリー(片岡訳)『ミツバチの会議』築地書館>

マキノの庭のミツバチ日記(47)

ハチのこころと春の空

和バチ(ニホンミツバチ)を飼うこの辺の者にとって、ゴールデンウィークも末になると、心落ち着かぬ時期も終わりになる。捕獲した分蜂群の箱を数えたり「逃がした群れは大きかった!」と悔しがったり。来年に向けて新たな工夫を考えることも。振り返ってみると、今年は、ミツバチに普段と違う珍しい行動も起こり、 そのこころが読めなかった。春とはいえ、寒くなったり急に夏みたいに暑くなったりで、気候が不安定だったのも一因か。コロニーを実質的にリードするといわれる女王付きの宮廷バチたちも、いろいろ微妙な判断を強いられ戸惑うことも多 かったのでは。

私が用意したもろもろの捕獲対策も有効だったとは言えない。例えば分蜂集合板。これまでいろいろと試みたが、今回も実績を作れなかった。使っている人たちからは高い成功率だと聞かされるのだが。ハチ寄せに定評があるキンリョウヘンの花も、今回はあっさり無視された格好。蜂にとって高い松の木が最高に魅力的で安心できる所なのかも(写真;松の梢のあたりを乱舞する分蜂群)。

今年最初の分蜂の時に起こったような出戻り(いったん出た分蜂の群が、しばらくして元の巣箱に戻ること)も興味深い現象だ。「大奥」物語になぞらえて、腰の重い御台所(女王バチ)と円滑な引っ越しを進めたいお局(宮廷バチ)たちとの間の駆け引きなどと、つい俗っぽい空想をしてしまう。また、いったんは高いところに蜂球が作られ私らが諦めかけたときに、意外にもすーっと下方に降りてきた今回の例も面白い。蜂球は間に合わせの中継地点でもあるようだ。

1 日の内に2回も続けて分蜂が起こったことも不思議だ。土地の人の話でも、第2分蜂と第3分蜂は前の分蜂からそれぞれ1~3日を置くとのことだった。私のここ数年の経験でもそんなところだと思っていたが、今年は違った。ハチ友らの話をまとめても、1日の内に続けて起きた例が、私のところも入れて3件。皆さん方も不思議がっている。王女姉妹がほとんど同時に羽化するケースがあるというがそれが起きたのだろうか?それでいて平和的に双方が旅立つというのが、ちょっと理解しがたい。

捕獲群が日を置かないうちに逃げ出すことはよくあることだが、これをやられると強く印象に残る。私が午後の散歩にちょっと出て帰ってきたときには、箱は空っぽ。巣板も作らず砂糖水の給餌は食い逃げしていった。採蜜から帰ってきた働きバチ1頭が、仲間を失って心細げにうろついているだけであった。

でも、まだ巣箱の中は温かい。「吉良殿」ではないが、それほど遠くに逃げてはいないと思って近くの木立を探してみた。すると薄い煙のようなものがつむじ風みたいに巻きながら遠ざかっていくのが見てとれた。追っかけたがすぐ見失ってしまった。つい1時間前は巣箱の出入りはごく普通の感じだっただけに、残念。私が散歩に出たのを見計らって一斉に逃げたような格好で、悔しさも感じた。だが彼女らにとってもっといいところがあるのだろう、と思うことにした。

分蜂群が定着しない理由としてよくあげられるのには、同じ箱で一緒に暮らした親族と餌場が競合しないところへ去るという説。他にも、女王が不在の群(無王群)は不安定で逃げやすいという説がある。だが経験不足で私には今回のことがよく整理がつかないままである。ハチのこころは分からない。(タイサク)

マキノの庭のミツバチ日記(46)

ワイ、ワイ、Y-day

快晴。昨日は庭に一つあるニホンミツバチの巣箱に、今年初の分蜂が起きる「X- day」 だったが、飛び出した群れの確保に失敗した。そのつい翌日の今日(これ を「Y-day」とでも言おうか)、一日の内に思いがけず2回に及ぶ分蜂(第2分蜂と第3分蜂)が起こり、私と妻は右往左往、ワイワイと走り回らされる羽目に陥った。結局は2箱分をゲットできたのだが。

11 時過ぎに巣箱から今日最初のハチ群の噴出を発見。その群は例によって辺りをランダムに飛び回ってのち、近くの松の木 10 メートルほど上の枝に留まった。昨日と同じく手が出せないほど高い。私たちは身の無力さを毒づきながらも、ただ見上げるだけ。だが 15 分ほど経った時、蜂球が端からほどけていき、無秩序な霞 (カスミ)のように広がった。その群はゆっくり動き出し、近くの背丈の低い杏 子(あんず)の木の枝あたりにまとわりつきはじめた。ちょうど、オートフォーカ スのカメラのファインダーをのぞいた時のように焦点を結んでいき、ついに見事な蜂球が姿を現した(写真1)。

今度はほんの 2 メートルほどの高さなので、妻とともに捕獲作業に入った。杏子の枝々がいろんな方向に張っていて足場の悪いところだが、お目当ての蜂球は比較的取りやすい位置にあった。そこで、一気にポリ袋に塊を落とし込み、用意の空の巣箱にはたきこんで蓋をした。ポリ袋は巣箱の入口近くに置いた。すると袋に残っていたミツバチが続々とはい出て、吸い込まれるかのように狭い巣門から内側に入っていった。これは女王が巣箱の中に確保されている証拠で、「シメタ ッ!」と思った。あたりを飛びまわっていた迷いバチたちも次第に巣箱の中に自ら入っていった。夕方暗くなるまでこれを放置することにした。

そうこうしているうちに1時すぎになった。なんとまたも元の巣箱で群れの噴出騒ぎ。ちょうどこの時、小織さん(ミツバチまもり隊隊長)夫妻が庭に様子見に来て異常を見つけてくれたのだった。私は、分蜂がこんなに連続することがなかなか信じられなかった。巣別れした群れの行き先は、やはり高い松の木に。だがそのうちに塊がほぐれて全体は動き出した。

私たちは霞のような群れの後を追いかけた。100 メートルくらい走ったか、ごく近くの広い駐車場の土手近くまで移動したのを、小織さんの奥さんが目ざとく見つけた。大群はサンショの木の根元近くの太い枝の一点に凝結していき、大きな塊になった。静まるのを待って、小織隊長がポリ袋の中に塊を落とし込んだ。それを持ち帰って木箱の中へうまく収容できた(写真2,3;小織氏提供)。

元の巣箱も気になったが、これは何事もなかったように落ち着きを取り戻し、通常の外勤バチが出入りしているのでひと安心。昼食をとれたのが2時半ころだったか。捕獲した2群の内の後で獲った分は、かねてからミツバチを飼いたいと言っていた小織さんの家に箱ごと引き取られた。最初に獲った群れは、夜になって私どもの家の前庭に移した。今日は蜂に振り回されて疲れる 1 日だった。(タイサ ク)
(しかし悔しいことに、前庭に置いた新しい群れは、大捕り物のあった翌日の午後にどこかへ逃げて行った。捕獲群に逃げられたのはこれで3度目の苦い経験だった。)

マキノの庭のミツバチ日記(45)

X-day が来た。しかし・・・

ついに X-day、つまり分蜂(巣別れ)の日が来た。今年最初の分蜂(第一分蜂)なので、それまでの女王バチが約半数に上る手勢を連れて別の住処に移るはず。残された巣は娘女王と居残り組が引き継ぐことに。

X-day を 2 日前くらいと予想して待機していたのだが、いずれも空振りだった。 昨日などは巣門に集結したミツバチの動きが異様に活発になり、羽音がうるさい。 あたりをでたらめに飛びまわるものもいて、いよいよ分蜂の時が来たかと思ったことが三度もあったが、結局は収まって静かな夜を迎えていた。分蜂に向けて参加要員のトレーニングあるいは予行演習みたいなことをしているのかと思った。

今朝も快晴で風も弱い。8 時半くらいに巣門付近が急ににぎやかに。時騒ぎにしては早い時間だ。20 分も経ったころ、ミツバチの群が巣箱の内側から次々に押し出されてまるで湧き出すかのよう。巣箱前面や地面にまで蜂があふれる(写真1)。 これはいよいよ本番だと、ピーンときた。舞い上がってあたりを飛びまわるものも数知れず。唸るような強い羽音が仲間同士を鼓舞するかのよう。めったにないチャンスなので、用意のレコーダーを取り出して録音し、カメラで写真と動画も撮りまくる。

蜂たちは庭一面を飛びまわり、木々の間を探索するかのような行動のあと、9 時半ころには近くの松の木の高いところにある枝に集結した。仮の宿りである蜂球を作ったのだ。昨年はハシゴをかけてその蜂球ごと回収することができたが、今回、留まっている枝まで 10 メートルほどもあり、松葉や枝で囲まれていて、分蜂群を採るのは諦めざるを得ない。近くに回収のための集合板やキンリョウヘン(蘭) の鉢を置いていたが、残念ながら役に立たず。留まり場として最適の天然素材である松の枝には敵わなかったようだ。

ところが、思いがけないことが。この蜂球がみるみるうちに崩れて、また辺りは騒乱状態。なんと、出てきた元の巣箱に続々と戻っていくではないか。分蜂の際 に女王バチが出遅れることもあるそうで、その場合は働き蜂が集団でお迎えに戻ると聞いたことがあった。分蜂の時に臨んで女王はダイエットしてスリムな体になるというが、減量が間に合わなかったのか。時には女王が自分の巣箱から出るのを嫌がることもあるとか。そんなことをぼんやり考えているうち、今度はまた、巣箱内側から吹き出るような蜂の大河の流れ。いよいよ女王も説得され(?)お 出ましかと、群れの飛び行く方を見た。やはり今度も松の枝に蜂球を作って定着 (写真2)。さっき止まったところの近くで、今度も手が出せない場所。蜂球も前よりは大きい。双眼鏡で女王を確認しようと試みるが、分からず。

この群れは 1 時間ほどそこにいたが、ついに北東の方向に群れで飛び去って行った。蜂球を作ってそこから偵察隊を出しよい住処を探すといわれる。だが、既に下見をしている場合は長居をしないとも聞く。私は双眼鏡をもって後追いし、飛び去る行方を確かめようとしたが、群れがばらけたように薄く広がっているので、 全体の動きがつかめない。「どこかで生きながらえて」と念じながら見送った。(タイサク)

マキノの庭のミツバチ日記(44)

庭先の巣箱を囲んでミニ見学会

前線通過で天気は一変。あいにくの曇り空の下、我が庭では、滋賀県内のある科学者グループ(当日は 10 名たらずの退職者ばかりの参加だったが)の要望で、ニ ホンミツバチ飼育の見学会をもった。といっても、巣箱は 1 台しかないので面はゆいのだが。

何はともあれ巣箱に直行。昼過ぎに起こる「時騒ぎ」(若バチの飛行トレーニング) を、タイミング良く見てもらえた。箱の「のぞき窓」からは、内側にミツバチの群がびっしり並んでいる様子もはっきり見ることが出来た。

あとは、他の空の巣箱(待ち箱)を開けて、もともとは巣箱に出来ていた 8 枚の巣板(これが巣の本体)の内の 1 枚を使いながらハニカム構造など説明。「巣板が 蜜ロウからできているというがそのロウはどこから?」という普段聞かれなかった質問が出た。「蜜バチは蜂蜜を食べて体内の代謝でロウを作りだし体表に分泌します。それを口でこねて次々と貼り付けて巣を作る」と一応の説明。空っぽの木箱の中に一から巣板を作るということが興味を惹いた風。

ミツバチの家族 1 万頭ほどが一体化した生活、変わった習性の数々を一気に話した。中でも、暗い巣箱内でのダンス・コミュニケーションでは、視覚より聴覚が重要という説明が皆さんには意外だった模様。現在のミツバチ脳研究の動向にも熱心な質問があった。ちょうど季節もよく、巣別れの話を多くしたが、ミツバチダンスによる新居選定では、情報を確かめに行って支持を決めるという点に「まぁ 民主的!」との声が上がった。女王バチが交尾後に精子を何年も保存して使えることにも、「冷凍保存じゃないのにどうなっているのだろう?」と関心が寄せ られた。

ミツバチの生存を脅かす環境悪化がここマキノの地にも及んでいる問題も紹介。 かつてはあちこちに巣箱が置かれニホンミツバチが飛び交う姿がよく見られたが、 今ではさっぱりという残念な状態。その衰退はなぜと問われ、ラジコンヘリによる農薬散布が一番疑わしいと答えておいた。稲田では、夏にホソカメムシが米粒を吸い、黒点の付いた斑点米ができる。ネオニコ系農薬の一種スタークルがその防除に使われるようになってから、ハチが少なくなったと地元の人もいう。私方の前の田には撒かれなくなったが、毎夏、町内の広い範囲の田にスタークル散布が続いている。手元にあった斑点米実物を取り出して見てもらった。「問題なのは、1000 粒中 2 粒の斑点米があると米の等級が下がってしまい、60 キログラム当たり 600 円ほどの価格低下があること」と話し、農薬依存から脱しきれない現状も知らせた。

ネオニコに絡む最近の動き、例えば日弁連が出した意見書や、最近公表された欧州食品安全機関の科学的検証の内容などについても質問の渦に。なぜこれまでたいした問題にならずマスコミで低調なのかということも話題になった。これは大問題だと改めて言う人もいた。さらに論議は県内の有機農業の行方や農業政策にまで及んでいった。

この他、実際の体験として、試食というほどでないが食パン片に蜂蜜をぬって味わってもらった。独特の香りがあり甘くて濃い、おいしいとの感想だった。

後日、参加者からの感想として寄せられたものの中には、「ミツバチの暮らし方に感動し、人間生活に生かせるものがあるように思いました。また、農薬の怖さにも改めて考えさせられるものが」というのがあった。(タイサク)

マキノの庭のミツバチ日記(43)

ミツバチ(そして人も?)踊る春

長いこと頑固に閉じていた庭のサクランボのつぼみが一斉に開き始めた。そしてついに私が待ち望んでいたその日が来た。その望みというのは、サクランボの木の花々にウチのニホンミツバチたちが群がって採蜜してくれる様を目にすること。そしてその羽音の弦楽重奏曲を聞きたいということだった。この日、20頭ほどのニホンミツバチがてんでんばらばらに樹冠に入り、花を次々に移っては頭を突っ込み忙しくしている(写真)。少し興奮気味で楽しそうにさえ見える。しばらくすると、すぐ近くの巣箱に直行するものもいる。おそらく満タンの腹を抱えていたのだろう。私は脚立を持ち出して木の傍に寄り、カメラで採蜜の様子を撮りまくり、新たに買った音質の良いボイスレコーダーで羽音を録音してまわった(音声解析にかけるつもり)。

この良き日、もう一つ期待していたのは、ミツバチの未来(それは人の未来にもつながる)に関わることであった。EU(欧州連合)でネオニコ系農薬3種類の恒 常的禁止の可能性がいわれてきた。EU 執行機関である EU 委員会が、その投票 を今日(22日)に行うのではとの外国からの報道があったので気になっていたのだ。EU ではネオニコ3種類について、2013年12月以来既に3年以上の使用規制措置がとられている。その暫定措置では途中脱落していた英国までが、今度は禁止賛成の側に回るという。

つい先月の28日、EUの食品政策に大きな影響力をもつ欧州食品安全機関(EFSA) が、ネオニコ3種類について、受粉を媒介するさまざまのハチ類に高いリスクが あるとする総合評価の結果を公表した。EFSA は、千5百ほどの論文を精査し、 環境汚染の推定値はミツバチにとって高リスクであると結論づけたのだった。このこと自体はネオニコ問題での大きな進展と思えるが、例によって日本国内ではまともな報道が少ない。

ところが禁止への期待を裏切るニュースが入ってきた。決定権を持つEU 委員会 (加盟各国の代表からなる)では、この22日、23日にネオニコ禁止を投票に付す予定がないという。これまでも昨年12月に投票されるのではとの観測があったが実現していなかった。農薬の巨大企業によるロビー活動が激化しているとも聞く。EU委員会の委員の間にも自国の事情があるだろうが、先延ばしにすべきことではないのでは?

投票といえば、ミツバチは新居候補地のうちから最良のものを8の字ダンスのコンテストで選ぶことができ、それは動物の投票行動の一つに数えられている。活発に採蜜をする働きバチを見るうちに、彼女らに「ネオニコ禁止の賛否」を問うことができたらきっと問題なく「賛成」が満票になるだろう、などと空想をしてしまった。それにしても人間の社会はあまりにも複雑化しすぎている。(タイサク)