マキノの庭のミツバチ日記(43)

ミツバチ(そして人も?)踊る春

長いこと頑固に閉じていた庭のサクランボのつぼみが一斉に開き始めた。そしてついに私が待ち望んでいたその日が来た。その望みというのは、サクランボの木の花々にウチのニホンミツバチたちが群がって採蜜してくれる様を目にすること。そしてその羽音の弦楽重奏曲を聞きたいということだった。この日、20頭ほどのニホンミツバチがてんでんばらばらに樹冠に入り、花を次々に移っては頭を突っ込み忙しくしている(写真)。少し興奮気味で楽しそうにさえ見える。しばらくすると、すぐ近くの巣箱に直行するものもいる。おそらく満タンの腹を抱えていたのだろう。私は脚立を持ち出して木の傍に寄り、カメラで採蜜の様子を撮りまくり、新たに買った音質の良いボイスレコーダーで羽音を録音してまわった(音声解析にかけるつもり)。

この良き日、もう一つ期待していたのは、ミツバチの未来(それは人の未来にもつながる)に関わることであった。EU(欧州連合)でネオニコ系農薬3種類の恒 常的禁止の可能性がいわれてきた。EU 執行機関である EU 委員会が、その投票 を今日(22日)に行うのではとの外国からの報道があったので気になっていたのだ。EU ではネオニコ3種類について、2013年12月以来既に3年以上の使用規制措置がとられている。その暫定措置では途中脱落していた英国までが、今度は禁止賛成の側に回るという。

つい先月の28日、EUの食品政策に大きな影響力をもつ欧州食品安全機関(EFSA) が、ネオニコ3種類について、受粉を媒介するさまざまのハチ類に高いリスクが あるとする総合評価の結果を公表した。EFSA は、千5百ほどの論文を精査し、 環境汚染の推定値はミツバチにとって高リスクであると結論づけたのだった。このこと自体はネオニコ問題での大きな進展と思えるが、例によって日本国内ではまともな報道が少ない。

ところが禁止への期待を裏切るニュースが入ってきた。決定権を持つEU 委員会 (加盟各国の代表からなる)では、この22日、23日にネオニコ禁止を投票に付す予定がないという。これまでも昨年12月に投票されるのではとの観測があったが実現していなかった。農薬の巨大企業によるロビー活動が激化しているとも聞く。EU委員会の委員の間にも自国の事情があるだろうが、先延ばしにすべきことではないのでは?

投票といえば、ミツバチは新居候補地のうちから最良のものを8の字ダンスのコンテストで選ぶことができ、それは動物の投票行動の一つに数えられている。活発に採蜜をする働きバチを見るうちに、彼女らに「ネオニコ禁止の賛否」を問うことができたらきっと問題なく「賛成」が満票になるだろう、などと空想をしてしまった。それにしても人間の社会はあまりにも複雑化しすぎている。(タイサク)

マキノの庭のミツバチ日記(42)

啓蟄(けいちつ)の日を越えて

このところ気温上昇が著しい。防寒用に巣箱を覆っていた発泡スチロール製の白いカバーをついに取り外した。次に、巣門を含む台座部分の交換に移る。この時は面布(頭にかぶる網)と手袋を用意し、妻の助けを得て巣箱の台座を切り離し、新しいものに交換した。静かにしかも手早く作業できたので、ミツバチが騒ぐことはなかった。台座の上面(底板)には巣屑が積もるほどに溜っていた。放っておくとスムシに入り込まれて巣の崩壊の危険が生じるところだった。巣箱は前扉を開けて掃除できる仕組みになっていたが、寒い間はミツバチの気が立っているみたいなので、なかなか手を出せなかった。

3 月に入り啓蟄の日も過ぎて、虫も人も動きがにぎやかになってきた。もちろん我が庭のニホンミツバチたちは、既にトップ・ギアで動いて花蜜や花粉の採集に余念がない。一方、ハチ飼いやハチ仲間と言われる人間たちの動きも活発に。月末か4月中には分蜂(巣別れ)が予想されるので準備がいる。私のところでは、 例年、4 月末頃に巣箱から大群が女王とともに飛び出し、近くの木の枝に半球状の塊、つまり蜂球、を作る。これは新しい住処に移る前の仮の宿りだ。

蜂球(分蜂の群れ)を回収するのは簡単ではない。春の分蜂に向けてのもろもろの道具や仕掛け(写真)は、琵琶湖対岸に住む井上さんが、冬ごもりの手仕事で作っておいたもの。はるばる運んでくださった。分蜂の群を蜂球にして止まらせる集合板は、ワラ縄を板に巻き付け面状にして枠で囲んだもの。その表面には蜜ロウで固めている。このタイプは回収成功率が高いという。分蜂で巣を飛び出した群れは、表面がざらざらした木の枝に好んで集まるといわれ、集合板もその好みに合わせている。

これを 2 メートルほどのポールの先に、縄面を下にして付けておく。うまく蜂球がそこに着いた場合は、集合板をそのまま取り外して、ロート状のつなぎ箱(ジ ャンクション)にはめ込むことになる。つなぎ箱の下には新しい巣箱がセットさ れていて、捕獲された群れは追い込まれてそこに収まる。つなぎ箱はその後取り去る。このような工夫を井上さんは次々考えだしている。

樹木のかなり高いところに蜂球を作られると、捕獲が難しくなるが、井上さんはその対策も考えている。高いところに出た枝にロープを掛けて集合板をそろそろと釣り上げて固定しておく。まんまとそこに集まってくれたら、ロープを緩めて地上に降ろし、つなぎ箱を経て巣箱に移すという方式。これも試しにということで、庭の松の木に設置することにした。後は分蜂の日を待つばかり。(タイサク)

マキノの庭のミツバチ日記(41)

春が近寄る日々

2 月の 26 日。朝から晴天。ただし風はまだ冷たく感じられる。数日前まではあたり一面に居座っていた白い陣地は急速に縮小し、次々と黒い地面にとって変わられていく。生き物を育む土の臭いが久しぶりに漂ってきた。気の早いイヌフグリが数個の小さな花を開いている。庭の巣箱では 10°C近くなった昼前からにぎやかな出入りがある。巣箱の入口付近はまるでお祭り騒ぎのようだ。働きバチが次々と飛び出していく一方で、勢いよく戻ってくるのがいる。若手のハチたちはあたりをやたらと飛びまわっている。少し前までは、氷点下の寒気の元で熱を生み出すために必死に使った飛行筋だが、今や翅に連結され自由に空を飛びまわれる。 それを喜びはしゃぐように見えるのは、私の気のせいだろうか。花粉の持ち込みがいつもより多く、帰還のハチの半分以上が黄色や白の花粉の塊を後肢バスケッ トに抱えている(写真1)。タンパク源である花粉を十分に確保できて、女王バチも本格的な産卵態勢に入ったのだろう。

ブッブッという羽音を、ミツバチが巣箱から飛び出すときや巣門到着を前にして発することがある。遠くでバイクのエンジンをふかしているとき聞こえる断続的な音に似ている。これまでに飼ったコロニーでは、静かに出入りするものたちが 多かったと思うが、今回の働きバチたちは掛け声みたいに音をたびたび出すように思えた。興味を感じて、とりあえず音声レコーダーに録音した(後ほど音声解 析ソフトにかけるのを楽しみにしつつ)。

昼からは知内川に沿って約 1 時間の散策に出た。ついでに、ミツバチを喜ばせるような花がどこかにあるのか確かめたい気持ちもあった。なかなか花らしい花を見つけられなかったが、我が家から約2キロ離れた下開田の道路脇に赤い花が盛 んに咲いているのに出会った。山茶花の垣根だ(写真2)。ただし採蜜中のミツバチは見つけられず。川沿いに戻って神社の近くの梅林を見たが、まだどれも硬いつぼみのままだ。百瀬川岸に来た時、民家の庭に蝋梅が咲き始めていた。そこに一匹のアオバエが来て熱心に採蜜していった。ハエにとっても花蜜は大好物。だがウチのミツバチ連中はどこに通っているのか、結局は分からずじまい。

28 日。昨日に続き今日も晴天。気温は昼頃に 10°Cを超えた。働きバチは相変わらず熱心に飛んでいる。帰りは主に西と北の二方向から戻ってくる。北の方角に思い当たる所があった。コンビニの裏の通りにも山茶花が咲く垣根があると妻 Y が言っていた。そこかもしれないと、自転車で探しに出かけた。住宅街の垣根や庭先をキョロキョロと見ながら、自転車でノロノロと回ったり、時には停車して一点を見入ったりした。不審者か徘徊老人に間違われかねない有様だったが、幸い何事もなし。ただし残念にも、山茶花などの蜜源に採蜜しているところを今日も見出せなかった。大量の花蜜や花粉を一体どこから運び込んでいるのだろうか。 (タイサク)

マキノの庭のミツバチ日記(40)

連日氷点下の低温に耐えて

最低気温が−(マイナス)9°Cあたりまで下がった。ご近所では、水道管が凍結し風呂が使えなかったとか管の破裂で慌てたとの声も聞く。我が家では、夜の内も水道栓からチョロチョロと出しておいたので、また庭の水道栓には厚いカバーで 覆っておいたので、持ちこたえてくれた。これ程低い気温はめったにないので庭の巣箱のミツバチは大丈夫かと気がかりだった。米国シーリー博士の本では、セイヨウミツバチは外気温-30°Cであっても巣の中を適温に保っているという。そのためには備蓄の蜂蜜を1週間で1kg ほど消費し熱に変えているとのこと。

今日は珍しく丸一日晴天の日。昼には 8°Cくらいまで気温が上昇した。そこで、午後 1 時には待っていたかのように巣門付近が騒がしくなり、巣箱周辺を働きバチ20 頭ほどが飛びまわっていた。辺り一面はまだ雪の積もった白い世界だが、それでも近くの木々の間を飛びまわって探索している猛女がいる。

庭にあるビワの木は寒さに弱い。重い雪をかぶり、時に激しい風雪にさらされてすり切れたような葉の間に、点々と花のつぼみが見られ、わずかに花弁が開いた ものもある。その樹冠に飛び回る影が時々見えた。ブーンという羽音はすれども姿をなかなか確認できない。ミツバチの羽音なら独特の高い音(周波数)のはず。 そこで、録音してエクセルの解析ツール(FFT)にかけて調べることを思いついた。だがその内、ビワの葉と葉の間の小さな青空のパッチ(隙間)に、花に頭を突っ込んでいる姿がわずかに見てとれた(写真、中央の白い矢印の先)。腹部の縞模様はまさにニホンミツバチのもの。横向きになった時にやっと全身が見えたが、 シャープな写真を撮るのには失敗。でも、まだ寒いなか早速に花蜜探索にかかる 仕事熱心さには感心した。多くの花が咲くまでにまだ日にちがかかりそうだが、下見に来たのだろうか。

冬の厳しい時期、籠城中のミツバチ・アマゾネスたちには気が立っているものもいるので油断は禁物。先週のこと、ミツバチの巣箱をかまっていて、出てきた働 きバチに左の掌を刺されてしまった。とりあえずゴムバンドで左腕を縛った。皮 膚に残った毒針を指先でつまみ取るのはよくない。極細のピンセットを用いて毒針を根本から丁寧に取り去った。私は 2 年ほど前にも刺されているのでアナフィラキシーショックがないとは限らない。かねて用意の注射器で傷口を吸引して水洗いし、クスリを塗った。幸いにも腫れも目立つほどにならず、大事に至らなか った。(タイサク)

マキノの庭のミツバチ日記(39)

ダンス言葉を読み解くミツバチの脳

冬ごもりが続く間に、日ごろ手にしなかった本などを読むことにしている。ある論文には驚嘆した。ミツバチが尻振り(8の字)ダンスで仲間に花蜜のある場所の位置情報を伝えることは、フリッシュ博士の発見によって既に広く知られる。 だがそのダンス言葉がミツバチ自身でどのように解読されるかは謎であった。

その論文とは、昨年秋に福岡大学の研究グループが、セイヨウミツバチの脳内に尻振りダンスで生じる特徴的な音から距離を検出する神経集団(回路)を発見したというもの(J. Neurosci. 誌に掲載)。たかが虫の脳と言うなかれ。最近は虫の脳も人の脳の基礎研究にヒントを与える可能性が言われてきている。

尻振りダンスのような行動は目で見て分かるし興味を惹くが、実際にダンスが周りの蜂の体の中でどのように受け取られ意味を持つかは外から見えない。そのブラックボックスみたいなものの内側で主役を演じるのが神経細胞。ミツバチの神経細胞がどのように情報を運んでいるのかを知ろうと思えば、極細の電極を個別の細胞に差し込んで電気記録を取らねばならない。ミツバチの脳がいくら小さいといっても、細胞の数は無数と言ってよいほどで、それらを生きたままの状態で 調べるには根気のいる繊細な作業をやらねばならない。大概の者は途中で断念する。今回、困難な仕事をやり遂げた研究者たちはすごい!と思う。

さて、ダンス解読の話に戻ろう。巣の中は昼でも暗闇なので眼が使えず、音や振動が情報伝達の主な手段になる。ダンサー(偵察バチ)の尻振りダンス(イラス ト参照)は蜜源などの場所までの距離と方角を表す。ダンスでは直進部(波線部) を通るときに翅と腹を震わせる。その時出す一連の断続音は周りの働きバチの触 角に捕らえられ、神経繊維を走る信号(電気パルス波)の形に符号化され、脳の 聴覚担当部に送り届けられる。この度の研究で、ダンスの断続音の長さから距離 を解読(解聴?)している聴覚回路が実際にミツバチ脳の中に初めて見出された。

情報の流れはそこではどうなっているのだろうか。実は、神経細胞同士の微妙な調節がなされている。ある神経細胞は、ふだんはお隣さんの細胞に抑制をかけ暴走(?)を抑えているが、音の信号が到来している間に限って抑制を止める。その間、相手の細胞は自由になって電気パルス波を発信する。この一連のパルス波信号の長さにより、多分目標までの距離が認識される。これらの細胞は、ダンサーが出す特徴ある短い音パルスに対し最も強く敏感に反応するが、それ以外の音や雑音はほとんど無視する。つまりラジオの選局(同調)機能のようにふるまっているのだ。

距離の他に、蜜源のある方角の情報は、上下方向と直進部(図の波線部)の間のズレの角度で表される。上記の細胞の仲間のひとつが、ズレの角度の解読に関与する可能性もあるそうだ。距離と方角が分かれば、特定の一地点が指示される。 ダンス言葉を成り立たせる仕組みが、あの小さなミツバチ脳にあることが解き明 かされつつある。我が家のニホンミツバチたちにもこの回路はあるのだろうか。

我々人も生きていく上で多くを頭脳に頼っている。ミツバチの脳の今回のような研究が、「認知」とか「思考」ということの意味をあぶり出すかもしれない。そんなことを思うと楽しくなる。(タイサク)

マキノの庭のミツバチ日記(38)

今度こそ最強寒波の襲来

いやに静かな朝。雨戸を開けると、一晩の内に 40 センチもの新たな積雪になっていた。積もった柔らかな雪が世間のよごれた音を吸い取ってくれているのか。 「今季最強の寒波」と、去年の 12 月ころからたびたび言われてきた。だがその割に、ここマキノの地ではこれまで大した積雪はなかった。それでも今朝のように 急激な積雪と低温化は、まさに当地でも今季最強の寒波襲来と言えよう。東京で 氷点下が数日続いたのは 32 年ぶりのこととテレビが伝える。マキノの土地の人の話では、以前、3 メートルの積雪になって 2 階から出入りしたことがあるとか。 たぶん数十年前のころの話なのだろう。

今日はいよいよ高島市にも大雪警報が出ている。JR湖西線も大雪で運転打ち切りや運行の乱れが伝えられている。今日の最高気温は氷点下 1 度止まりとか、あ まり経験したことのない低い値だ。とにかく、とりあえず朝から雪かきが必要。 門扉までの数メートルも 50 センチほどの雪で覆われていて歩けない。それで 30 分の雪かき重労働に専念し、生活道路を確保した。この雪かきの間も急に激しい 吹雪になり、閉ざされたように感じられ周りが見えづらくなる時があった。これ はホワイトアウトというのだろうか。

さて大きな関心は、裏庭に置いているニホンミツバチの巣箱の状態。昨日、小さ なスノコを巣箱入口の近くに立てかけておいたが、どうなったかと心配だった。 積雪が邪魔でおいそれとは近寄れない。レスキュー隊老隊員の若干 1 名、雪かき をしながら、1歩1歩と巣箱に向かう(写真1)。巣箱の台座部分は雪に埋まっているが、一応無事な様子を見て一安心。巣箱正面に置いた小さなスノコはしっか り隙間を確保し、空気取り入れ口(巣門)を守っていた(写真2)。

1 頭のミツバチが中から飛び出してきて辺りをうろついたが、寒さに耐えられず 雪の上に落ちケイレンしている。そのハチを取り上げて巣門に置いた。ハチの糞 (ふん)で巣箱の白壁には黄色い点々が増えている。白色のものの上に糞をするとよく言われる。近くの雪の表面にも黄色いスポットが見られるが、これはこらえきれずにやってしまった跡なのか。

雪かきの後は腕や腰が痛む。今日のような降雪だと日に 3 回は雪かきが必要。まだしばらくは雪が降り積もるというので、油断できない。しかし楽しみなこともある。雪景色は一夜のうちに違った世界を見せてくれる。葉の落ちた庭木の枝に 雪の花がにぎやかに咲くのを見るのも、たまには良い。鳥たちの姿を近くに見る のもまた楽しい。ムラスズメが数羽で訪れるのも度々だ。家のベランダにまいてやったパンくずをさかんにあさり、素早く呑み込んでいく。あたり一面の雪でエ サが見つけられず、よほど腹が減っていたのだろうか。その丸い頭、美しい模様 の羽、ふっくらとした丸っこいからだにあふれる可愛さに見とれてしまい、しば らくはぼんやりしていた。(タイサク)

マキノの庭のミツバチ日記(37)

ミツバチと冬の虹

今年の三が日は天気が良くなかった。3日の朝は雪で、ときには曇り空。寒い冬
場ではミツバチは巣箱にこもってしまい、出入りが目立たなくなる。その静かな
巣門に巣屑(すくず)を出しに出たミツバチ1頭がいた。そのハチと目が合った
(?)とたんに急発進のスクランブルをかけられ、私はしつこく追いまわされる
はめに。追われたのはその日で2回目。初めの時は、箒(ほうき)で巣屑を払っ
てやろうと寄ったときに、たまたま出てきハチさんとぶつかりそうになった。思
わず腕を払ったところ、怪しいやつと思われたのか、まとわりつかれ走って振り
切ったのだった。冬は気が立っているので巣に近づくなとよく言われる。

7日、一時的に晴れ。朝、命失われたハチの体が15頭分ほど巣箱の外に放り出さ
れていた。巣の内から飛び出して亡骸を抱えて行くのもいる。途中で重さに耐え
られなかったのか一旦は地面に下りたが、気を取り直したようにまた抱きかかえ
て遠くに運んでいく姿もあった。巣門付近のテラスでは巣屑の掃除も盛ん。巣屑
をくわえてテラスをちょっと飛んで、外に放り出すとU-ターンで巣の内に戻って
いくのが数頭。驚いたことには外から白い花粉を持って帰った働きバチがいたこ
と。今咲いている白い花粉の花はなにだろう?昼過ぎ3時近くで「時騒ぎ」(*)
がみられた。気温を測ったら摂氏7度付近であった。

9日。前日は雨やアラレの寒い1日だったが、今日の気温は8度くらいでときど
き晴れ間も出る。働きバチにとっては、冬ごもりで待機の後の待ちに待った掃除
日和らしく、巣門にたくさんの巣屑を出していた。巣の側面に貼り付けた発泡ス
チロールの真白な表面に、ところどころ黄色いシミが付いている。じっと我慢し
て腹に溜め込んでいたのを手近なところで排泄したらしい。

午後になって時雨(しぐれ)、ときにはアラレが降り、しばらくして晴れ間から陽
光がさす。それも15分ばかりでまた雨。この繰り返しのように目まぐるしく天
気が変わる。その晴れ間の見えたとき、巣箱の向こうに虹が立っているのが目に
入った。秋から冬にかけて「高島時雨」と呼ばれる天気の頃には、市内によく鮮
やかな虹が見られる。

虹の半円がまるで巣箱の裏から華やかに立ち上がるふうに見えた。それが気に入
って写真を撮ってみたが、残念なことに虹の色が薄くてはっきりしない。しゃく
だからスケッチにしようと思ったが、これもうまく描けなかった。色鉛筆なんか
で虹をきれいに描こうとするのはかなり無謀なことと思い知った。

その時思ったのだが、ミツバチにこの虹の色はどう見えるのだろうかと。ミツバ
チの色覚からすると、虹の環の外側にある赤色帯はほとんど分からない。その代
わりに、波長が短すぎて人には見えない近紫外部の光は、環の最も内側(紫色帯
の隣)に並んで、現実の色として見えているはずだ。紫外線の色がどんな感じの
色に見えているのかは我々には知りようがない。ミツバチたちも虹を眺めて、き
れいだなんて思うことがあるのだろうか。(タイサク)
(* 時騒ぎ;巣箱に向かい10数頭ほどがホバリングしながら飛んだり、あた
りを探るように飛びまわったりする現象で、短時間内に終わる。若バチの飛行訓
練だといわれる)

マキノの庭のミツバチ日記(36)

年の終わりに

今年 2017 年は、恐ろしい(あるいは不幸な)事件が頻発し、国際的には米朝の 緊張関係などもあり不安感に満ちた年であった。だがミツバチとの関わりで言え ば、個人的にはけっこう興味深い面白い年だった。

5 月、庭の鉢植えのキンリョウヘンに、花房がたわわになるほどにニホンミツバ チが集合したことがあった。野生の群を招き寄せて巣箱に確保できたのは初めて の経験。驚きであり楽しい事件であった(17 号)。その群れが半月も経たないう ちに、寄生ダニ(アカリンダニ)によりみるみる内に滅亡していったのは、これ また驚かされ残念に思ったことでもある(19 号)。不自由な羽で無理に飛ぼうと したり、巣房に頭を突っ込んだまま餓死したりしている蜂を見て痛ましく思った。

同じ頃、琵琶湖対岸の地に住む Bee 仲間の I さんらが、ニホンミツバチの一群れ の住む巣箱1個を、我が家に持ち込んでくださった。その群れのルーツは山梨県 から移入したもの。アカリンダニの寄生に強い群れで、手作りの巣箱もその地の 技術導入がなされている。こうして、新手の一家が裏庭に住み着いた(20 号)。 箱側面には板チョコくらいの広さののぞき窓がありコロニー観察に大いに役立ち、 日記のネタをいくつか提供してくれた。

分蜂は毎年経験することではあるが、いつ見ても印象深い。6 月の朝 8 時すぎに 夏分蜂が起きた。松の木の高いところを無数の蜂の群れがさまよったのち、木の 枝の一点に急速に集まって塊(蜂球)を作った。高いところだったが、長い梯子 (ハシゴ)を使っての回収成功で久しぶりに興奮した。捕獲群は同じ町内だが少 し離れた山際の農家にお譲りした(23 号)。その 4 か月後にこの養子組と再会し、 元気な姿を見ることが出来た。

8 月のある朝の 6 時過ぎだったか、すぐ近くの田にラジコン・ヘリが農薬(ネオ ニコ)散布に来た。稲の害虫カメムシなどの駆除が目的。散布では風向きが気に なった。過去にも、散布の後にミツバチの調子が悪くなりコロニー絶滅に至った 経験がある。散布空間を飛んで被曝(ひばく)するのを避けるため、巣箱の出入 りを一時的に止めた(26 号)。残留性や浸透性といったネオニコの危険性がまだ 広く知られていないのがもどかしい。

秋になり様々の花が咲き乱れてきた頃に蜜絞りを決行。取り出した 7 枚の巣板は 切断面が霜柱のように見える。巣板には、表面に白いシール(蜜ブタ)が貼られ ている。それをはがしていくと、琥珀色の蜜のドロリとしたしたたりがまぶしか った(30 号)。

花蜜と花粉に生計を頼るミツバチは、花が季節の移ろいとともに次々寿命を終え ると、新しく咲く花を求めてジプシーをやり続けなければならない。秋が深まる と、そんな働きバチたちの愚痴が聞こえてきそう(32 号)。

12 月に入ったばかりなのに真冬並みの強い寒気が到来。保温対策のつもりで、巣 箱の 4 面に発泡スチロールの板を 2、3 枚ずつ重ねて貼り付けた(35 号)。

以上は振り返ってのトピックス。ミツバチも付き合いが長くなると、なんだかフ ァミリーみたいに身近に感じられる。時にはこちらも観察されているのではと思 うことも。とにかく、無事この厳冬を乗り越えてほしいと今は念ずるばかり。(タ イサク)

*文中の(号数)は日記の通し番号。「ミツバチまもり隊」ホームページにバック ナンバー収録。

マキノの庭のミツバチ日記(35)

12 月、真冬並みの寒気が到来

数日前までは小春日和を思わせる好天で、ストームみたいにして若いニホンミツ バチ 15 頭ほどが巣門近くを飛びまわっていた。この若手が春までがんばること になるのだろうか。ついつい期待の眼差しを向けてしまう。

そのミツバチを狩りにきたわけでもなさそうだが、オオスズメバチの 1 頭が急に 現れた。見たこともないほど大きなオオスズメバチの女王で、たまたま換気で開 けた我が部屋の窓から入ろうとした。この女王には大いに興味をひかれたが、入 られたら我が家の人間社会に混乱がもたらされるので、つれなく窓を閉めた。彼 女は越冬地をあれこれと探し回っている様子で、その内どこかへ去った。

この時期、スズメバチの家族は崩壊していき、多数いたワーカー(働きバチ)た ちは命を落としていくが、生き残るのはほとんどが若い女王バチ。その体内には 交尾相手の雄バチの遺した精子が卵子とともに貯えられている。女王は朽ちた 木々や倒木などに身を隠して越冬し、春になると産卵して自らの新しい家族を一 から作り出し命をつないでいく。先ほどの女王の飛ぶ姿に孤独の影を見たように 思ったのは気のせいだろうか。

その点、ミツバチは貯えのある暖かい巣の中にいて家族大勢で冬を越すことがで きる。天気予報では、夜半に大陸から今季最強といわれる寒波が下りて来て、当 地もみぞれになるという。気温もしだいに下がるのが感じられた。そこで、庭に ただ一つある巣箱の 4 面に、発泡スチロールの板を 2、3 枚ずつ重ねて貼り付け ヒモで縛って固定した(写真)。これでずいぶん暖かなのでは。

昨日は西日本の宮崎や広島あたりでもかなりの積雪があったとニュースが伝える が、意外なことにこちらは目立つほどの降雪がない。いつもは若狭湾から関ケ原 にかけての雪雲の侵入路があるみたいで、いの一番に雪が降る所だ。だが、今回 は寒波が西から回り込んできたというニュース解説で納得できた。昨夜のうちに 初雪かみぞれが降ったのだろう、隣の屋根の一部に白いものがわずかながら見え た。まだ 12 月に入ったばかりなので、これから先の厳冬期が思いやられる。(タイサク)

マキノの庭のミツバチ日記(34)

冬ごもりに向けて

めっきり寒くなってきた。まだ11月下旬に入ったばかりというのに、今日の最高気温は7度で真冬並みだ。ニホンミツバチの巣箱もここのところ出入りが急に減り、産卵に欠かせない花粉の持ち込みもない。あたりに咲く花も少なくなったが、ミツバチの方でも冬に備えて産児調節に入ったのかもしれない。働き手の蜂が生まれてこないと巣そのものの自主管理・運営が大変。だが良くしたもので、寒くなって冬場にかかると働きバチの寿命が延びて3か月かそれ以上になる。ふつう、働きバチの寿命は1か月ちょっとくらいだから大幅アップだ。花がないと蜜集めなど外勤の仕事はないが、巣を守って春の活動再開までの越冬業務が彼女らの双肩(?)にかかってくる。たとえば巣の温度を保つための暖房活動はおろそかにできない。

前にも書いたが、働きバチは胸の筋肉(飛行筋)を激しく動かすことで熱を発生させる。ただし羽そのものへの連結をはずすので、真夏での旋風行動のように風を起こしてあたりを冷やす恐れはない。冬の暖房の燃料に相当するのが蜂蜜で、筋肉にエネルギーを供給する。冬を無事に越すのに蜂蜜の十分な備蓄が必要なのは言うまでもない。

庭の巣箱は箱枠(四角の木枠)を3ないし4段に重ねて作られており、今は最上段の箱枠に設けられた観察用の窓から内をのぞくことができる。先週までは働きバチの集団がその最上部の巣板の表面を黒々と占領していたが、最近ではわずか2、3頭しか見られない。その代わり、蜜液が小部屋(巣房)に貯えられキラッと光っている有様がよく分かる(写真1)。

先の6月頃には、こののぞき窓の付いた箱枠は中段の位置(巣箱の中頃)にあり、そこから内をのぞくとちょうど育児域あたりを見ることができた(日記24で書いている)。秋の採蜜の時に最上段の箱枠を内の巣板ごと取り去り、中段にあった箱枠が最上段へ繰りあがった。その際、一番下に空の箱枠1つを継ぎ足している。のぞき窓から見える最上段の箱枠の内側は、6月の頃と全く同じ巣板の部分を見ていることになるが、そこの巣房に収められているものはどれも蜂蜜だ。前はさなぎを収容していたそれぞれの巣房は蜜壺(みつつぼ)と化している。巣の上部に蜜を貯めるのはニホンミツバチのいつもの習性で、もちろん育児域はより下方に設けられている。

閑散とした様子にすこし心配になって箱の下部をのぞき見ると、巣板の下端には蜂がびっしり詰まるように集まっているのが見えた。一か所に集合して体を寄せ合い、暖を取るようなモードになったのだろうか。厳冬期には蜂球を巣の中央部に作るといわれるが、まだそこまでには至ってない。ただ、その準備が始まったようで、巣板のうち邪魔な部分をかじり取って生じたとみられる巣屑(すくず)が巣門に出されるようになった。

遠くに見える赤坂山などには初冠雪が見られた(写真2)。平地に雪が降る前に対策をとらないといけない。巣門に細い木片を入れて入口を狭くし、寒風を避けるようにした。ついで、とりあえずだが発泡スチロールの板を箱の側面に貼り付けた。(タイサク)