久しぶりの越冬隊、がんばって!
2月の中旬、気温10度を超えて暖かい日が現れるようになった。懐かしいような土の臭いを風が運ぶ。梅の花も1分咲き、近くの道ばたには早くもムスカリにタンポポが点々と花ひらき、季節の祝宴への先触れを思わせる。こんな時、庭の巣箱のあたりが急ににぎやかになった。その巣箱にいわゆる「時騒ぎ」が起こり、箱に向かって十数頭がホバリングしながら飛んでいた(写真)。冬籠りでの運動不足を解消しているような感じだ。巣箱の周りに保温のために貼った白い板に、黄色いシミが点々と数十か所もある。これはハチのウンチだ。時騒ぎは外勤見習いさんの飛行訓練だとふつうは言われるが、冬場は脱糞のためという色気のない説もある。でも、この騒ぎは私にはとても感動的な光景だ。実はミツバチの巣箱がこの庭で冬を迎えることができたのは4年ぶり、久しぶりの越冬隊だ。この巣箱の一家は、昨年の6月に湖の向こうからもらわれてきて、そのまま居ついてくれた。
以前は、当地マキノ町にもニホンミツバチの巣箱をよく見かけたのだが、ここ数年、貸家(巣箱)の店子(たなこ)がいなくなり、今や大家さんをしているところはウチ以外にない!というありさま。去年の春だったか、近くのレンゲ畑や満開の桜のあたりを探してみたがニホンミツバチの影はなし。ラジコン・ヘリで水田に撒かれたミスト状の農薬(ネオニコチノイド系)のせいなのか病気なのか分からないが、相次ぐミツバチの群れの消滅がおきた。その度に、「もう飼うまい」と決意した。が、また春には巣箱の用意をしてしまう。ある年は巣門に次々と蛆を出した群れがあり、やがて次世代の働き手が減って消滅に至った。本来なら花蜜や花粉を集めて飛び回る働きバチ達が、結構大きな蛆を抱えてヨタヨタと遠くに運び去ろうとするのを見ていると、哀れで胸がいたむ。病的な蛆を巣から運び出すのは、糞を巣外でするのと同じく、衛生上のことらしい。
この異郷に嫁入りしてきた巣箱の衆も、夏ごろの分蜂のあとで新女王の出現が怪しくなり、心配したことがあった。ひところは働きバチが1頭も姿を見せず、あきらめて箱の入口をテープで塞いだ。だが翌日、テープの一部が破られているのを見て、もしかして居るのではと竹ヒゴで巣箱の入口から底面を浚(さら)ってみた。すると、そのヒゴに絡みついて鉄棒逆上がりのような姿勢のものも含め10頭ほどがずるずると引き出されてきた。さらに30頭ほど外へ顔を出してきたのには、思わず歓声をあげてしまった。
絶滅を免れて冬に至ることができたのはなぜだろう?ここ2年のことだが近接の一部の水田に限ってヘリによる農薬散布が控えられたこと、ハチの健康増進のつもりで乳酸菌液の散布を試みたこと、あるいは、もともと強い群れだからここまでもったのかもしれないなど、いろいろ考えてみるが分からないでいる。(タイサク)