巣別れの蜂群をキャッチ(その1)
蜂飼いにとって悩ましい季節が今年もやってきた。庭のミツバチに春の分蜂(巣別れ)が起きるのは、いつも5月の始め、ゴールデンウイークの頃だったが、今年は1週間早かった。その日、朝にはまだ小雨が残ったが、午後2時過ぎに巣門(巣箱の入口)がにぎやかに。初めは、いつものように多数の若バチが巣の前で飛行訓練をする「時騒ぎ」かと思ったが、さらに蜂たちの動きが激しくなり、巣門付近に群れが凝集し、内側からも次々と押し出してくる。湧き出すと言った方がいいか。
私は、これぞ待望の分蜂の到来かとばかり、分蜂群の捕獲グッズ一式を引き出して準備をした。このグッズは、ワラ帽子に網をかけた「面布」というもの、厚手の手袋、白い長そでのシャツ、そして捕獲用に改造したポリごみ袋などからなる。
やがて空中に飛び出てくるものが数知れず。先駆けの蜂なのか、それぞれが勝手に「止まり木」を探すようにあちこち飛びまわる動きがまず見てとれた。それが群れ全体に波及したかのように広がって、裏庭と隣の庭をカバーする範囲に及んだ。ウヮーン、ワーン、とにぎやかな音もする。
同じ町の蜂飼い(Bee組とでも言っておこうか)の二人を助っ人として来てもらった。その間にも隣の家の庭木のあたりに蜂の密度が高くなり、そのうち杏子(あんず)の木に集合場を得たのか、人の肩の高さほどある枝の一部にコブができ、みるみる膨らむように見える。つい先ほどのカオスというか混沌とした状態から、今や一つの終着点に向かって群れが収束していくのがいかにも不思議なことに思える。集合フェロモンなどシグナルが発せられているのだろうか、あたりにうろつく蜂達も次第にこのコブに吸引されていき、やがて女王バチも鎮座したのか塊(蜂球という)は落ち着きを見せた(写真)。
お隣の家は留守だが待ち箱の一つを以前から置かしてもらっており、立ち入りも認めてもらっていたので、早速に捕獲作戦開始。Bee組二人がポリ袋に蜂の塊ごと落とし込み、持っていった空の巣箱に振り落してフタをした。夜になって、巣箱をそっと我が裏庭に移動させ、興奮の1日が終わった。(タイサク)