酷暑と闘うミツバチたち
梅雨が明けて全国的に暑い日が続き、ところにより気温37度を超えたと報じられるこの頃である。湖畔にあって幾分か暑さをしのげるこの地であるが、庭のニホンミツバチはどうしているかといつも気になる。スズメバチを囲んで熱死させる「布団蒸し作戦」がやれるほどの能力ある働きバチは、高温(たとえば46度にものぼる)にめっぽう強いが、そうはいっても30分くらいの短時間での話。もちろん、巣房に収まる幼虫の生育には、高温は不適である。そのため、巣箱全体や少なくとも育児域だけは冷やす工夫がハチ自身の努力によりなされている。
先日、巣箱の中の様子を見ようとして前扉をそっと開けると、100頭にのぼる働きバチが中の床一面に散開し、頭をこちらに向けほぼ等間隔に並んで羽を動かしているところだった。「失礼しましたっ!」と言ってすぐに扉を閉め戻したが、騒ぎにはならなかった。外のテラスにいる連中が送り込んだ風を、さらに巣の奥から上方へ送り出している中継の役をしているようだ。このように集団で羽を動かし風を送る組織的行動は「扇風行動」といわれ、養蜂家の扱うセイヨウミツバチもこれをやる。風を送るときの体の向きがニホンミツバチは巣の外を向いている(写真)。ところがセイヨウミツバチはこれと真逆に、頭を巣の入口に向けて風を起こし、巣箱内の熱気を排出させている。外に臭いを出して天敵スズメバチを誘うのを恐れたニホンミツバチは、風が外に向かないようにしていると聞いたことがある。
暑さがひどいときは、水を運んで蒸発させ気化熱で涼しくしているとよく言われているが、これについて私は現場をまだ見たことがない。この方法は湿度の低い時は有効と思われるが、梅雨時のような高温多湿の時はどのくらい意味があるものなのだろうか。
水はどこから誰が運ぶのか?水汲み役は割と固定的だといわれる。ある実験によると、あたりに水場の無い地域に巣箱を移動させて、水場と餌場(糖液を置く)を人工的に設けた。その実験の結果は、セイヨウミツバチの外勤バチの内、1%程度が水汲み屋になり、専門業者のような固定した役割を果たすことが分かったとか。そのハチが巣に戻って口移しで荷下ろし屋(散水者)に水を渡すと、受け取ったハチが育児域などで水滴を広げて蒸散さすという仕組み。もちろん、水はそのような温度調節のほか、普段も蜜の調整(幼虫に与える蜂蜜は薄める)にも使われる。
他の避暑法として、私の「ハチ友」から聞いて教わったのは、冷凍庫で凍らせた保冷剤(アイスノン)2枚を天板に置くという方法。30度を超える猛暑の日にはこれを試みている。実際の効果のほどは分からないが、今のところ不都合なことはない。アルミフォイルなどの反射板を巣箱に貼って赤外線を跳ね返すということも考えたことがあったが、ギラギラ光る巣箱の外観がミツバチの機嫌を損ねるかもと思い不採択。決定的にスマートかつ有効な手がないのが残念。(タイサク)