啓蟄(けいちつ)の日を越えて
このところ気温上昇が著しい。防寒用に巣箱を覆っていた発泡スチロール製の白いカバーをついに取り外した。次に、巣門を含む台座部分の交換に移る。この時は面布(頭にかぶる網)と手袋を用意し、妻の助けを得て巣箱の台座を切り離し、新しいものに交換した。静かにしかも手早く作業できたので、ミツバチが騒ぐことはなかった。台座の上面(底板)には巣屑が積もるほどに溜っていた。放っておくとスムシに入り込まれて巣の崩壊の危険が生じるところだった。巣箱は前扉を開けて掃除できる仕組みになっていたが、寒い間はミツバチの気が立っているみたいなので、なかなか手を出せなかった。
3 月に入り啓蟄の日も過ぎて、虫も人も動きがにぎやかになってきた。もちろん我が庭のニホンミツバチたちは、既にトップ・ギアで動いて花蜜や花粉の採集に余念がない。一方、ハチ飼いやハチ仲間と言われる人間たちの動きも活発に。月末か4月中には分蜂(巣別れ)が予想されるので準備がいる。私のところでは、 例年、4 月末頃に巣箱から大群が女王とともに飛び出し、近くの木の枝に半球状の塊、つまり蜂球、を作る。これは新しい住処に移る前の仮の宿りだ。
蜂球(分蜂の群れ)を回収するのは簡単ではない。春の分蜂に向けてのもろもろの道具や仕掛け(写真)は、琵琶湖対岸に住む井上さんが、冬ごもりの手仕事で作っておいたもの。はるばる運んでくださった。分蜂の群を蜂球にして止まらせる集合板は、ワラ縄を板に巻き付け面状にして枠で囲んだもの。その表面には蜜ロウで固めている。このタイプは回収成功率が高いという。分蜂で巣を飛び出した群れは、表面がざらざらした木の枝に好んで集まるといわれ、集合板もその好みに合わせている。
これを 2 メートルほどのポールの先に、縄面を下にして付けておく。うまく蜂球がそこに着いた場合は、集合板をそのまま取り外して、ロート状のつなぎ箱(ジ ャンクション)にはめ込むことになる。つなぎ箱の下には新しい巣箱がセットさ れていて、捕獲された群れは追い込まれてそこに収まる。つなぎ箱はその後取り去る。このような工夫を井上さんは次々考えだしている。
樹木のかなり高いところに蜂球を作られると、捕獲が難しくなるが、井上さんはその対策も考えている。高いところに出た枝にロープを掛けて集合板をそろそろと釣り上げて固定しておく。まんまとそこに集まってくれたら、ロープを緩めて地上に降ろし、つなぎ箱を経て巣箱に移すという方式。これも試しにということで、庭の松の木に設置することにした。後は分蜂の日を待つばかり。(タイサク)