庭先の巣箱を囲んでミニ見学会
前線通過で天気は一変。あいにくの曇り空の下、我が庭では、滋賀県内のある科学者グループ(当日は 10 名たらずの退職者ばかりの参加だったが)の要望で、ニ ホンミツバチ飼育の見学会をもった。といっても、巣箱は 1 台しかないので面はゆいのだが。
何はともあれ巣箱に直行。昼過ぎに起こる「時騒ぎ」(若バチの飛行トレーニング) を、タイミング良く見てもらえた。箱の「のぞき窓」からは、内側にミツバチの群がびっしり並んでいる様子もはっきり見ることが出来た。
あとは、他の空の巣箱(待ち箱)を開けて、もともとは巣箱に出来ていた 8 枚の巣板(これが巣の本体)の内の 1 枚を使いながらハニカム構造など説明。「巣板が 蜜ロウからできているというがそのロウはどこから?」という普段聞かれなかった質問が出た。「蜜バチは蜂蜜を食べて体内の代謝でロウを作りだし体表に分泌します。それを口でこねて次々と貼り付けて巣を作る」と一応の説明。空っぽの木箱の中に一から巣板を作るということが興味を惹いた風。
ミツバチの家族 1 万頭ほどが一体化した生活、変わった習性の数々を一気に話した。中でも、暗い巣箱内でのダンス・コミュニケーションでは、視覚より聴覚が重要という説明が皆さんには意外だった模様。現在のミツバチ脳研究の動向にも熱心な質問があった。ちょうど季節もよく、巣別れの話を多くしたが、ミツバチダンスによる新居選定では、情報を確かめに行って支持を決めるという点に「まぁ 民主的!」との声が上がった。女王バチが交尾後に精子を何年も保存して使えることにも、「冷凍保存じゃないのにどうなっているのだろう?」と関心が寄せ られた。
ミツバチの生存を脅かす環境悪化がここマキノの地にも及んでいる問題も紹介。 かつてはあちこちに巣箱が置かれニホンミツバチが飛び交う姿がよく見られたが、 今ではさっぱりという残念な状態。その衰退はなぜと問われ、ラジコンヘリによる農薬散布が一番疑わしいと答えておいた。稲田では、夏にホソカメムシが米粒を吸い、黒点の付いた斑点米ができる。ネオニコ系農薬の一種スタークルがその防除に使われるようになってから、ハチが少なくなったと地元の人もいう。私方の前の田には撒かれなくなったが、毎夏、町内の広い範囲の田にスタークル散布が続いている。手元にあった斑点米実物を取り出して見てもらった。「問題なのは、1000 粒中 2 粒の斑点米があると米の等級が下がってしまい、60 キログラム当たり 600 円ほどの価格低下があること」と話し、農薬依存から脱しきれない現状も知らせた。
ネオニコに絡む最近の動き、例えば日弁連が出した意見書や、最近公表された欧州食品安全機関の科学的検証の内容などについても質問の渦に。なぜこれまでたいした問題にならずマスコミで低調なのかということも話題になった。これは大問題だと改めて言う人もいた。さらに論議は県内の有機農業の行方や農業政策にまで及んでいった。
この他、実際の体験として、試食というほどでないが食パン片に蜂蜜をぬって味わってもらった。独特の香りがあり甘くて濃い、おいしいとの感想だった。
後日、参加者からの感想として寄せられたものの中には、「ミツバチの暮らし方に感動し、人間生活に生かせるものがあるように思いました。また、農薬の怖さにも改めて考えさせられるものが」というのがあった。(タイサク)