マキノの庭のミツバチ日記(59)

今年も空からネオニコ散布

8月1日、この日は近所の水田への農薬による航空防除が予告されていた。稲穂を吸って斑点米を作るカメムシの駆除法として、毎年この時期になされる。庭の巣箱のニホンミツバチのことを思えば、できたらやめてほしい年中行事だ。朝7時頃から、ラジコン・ヘリが高濃度の殺虫剤を納めたタンクを抱えて近くに回ってきた(写真1)。私の庭に接する水田については、持ち主のご厚意で今年も散布対象からはずされたのは有難い。だが、ヘリでの農薬散布は広範囲に及びドリフト(空中浮遊分)の影響も無視できない。ニホンミツバチの行動範囲はほぼ4キロ四方に及ぶので、リスクがないとは断言できない。

働きバチを散布農薬から守るための対応策を昨日から考えていた。農水省が勧める巣箱の一時的移動も、この酷暑の中では危険だ。熱に弱いロウで出来た巣板は振動で落ちやすい。散布最中にはせめて巣箱からハチが出ないようにするしかな い。

当日の朝、私は 4時に起きた。日の出前でまだ薄暗く、気温は 25度近くまで下がっている。ハチたちは巣箱の内に戻っていると思ったが、実際に見に行くと、まだ 200頭ほどが箱の外にあふれて涼んでいる。もう一つの巣箱も同じ。やむを得ず、スプレーに入れた水を噴霧してかなりの部分を巣内に追い込んだ。ついで巣門を樹脂の網(メッシュ)でふさいだ。ハチは通れないが空気の出入りはできる。外に締め出されたものも 10頭ほどいたが見切り発車。さらに麻袋を巣箱にかぶせて、ドリフトが来た場合の被曝に備えた。

近くの水田への散布が終わったのが 7時半頃。しばらくは風向きなどの様子をみつつ、巣箱封鎖の解除のタイミングを待った。8時半になり思い切って巣門にはめこんだメッシュを取り去った。すると内側のハチが待ちかねたように出てきて外にいたハチたちに合流した。なかには離散家族同士の再会のようにハグのようなしぐさをしているのがいる。次には、採餌で青空に向かう働き蜂の流れができていった。

その後、10時頃に巣箱を見に行ったら、働きバチ 2頭が地面に降りて奇妙な徘徊をしていた。体を小刻みにけいれんさせながらでたらめに動き回っている(写真2)。指先で触って脅しても反応がない。このようなことはめったに見なかった光景なので気味悪く感じた。直接に今回の散布と関係があるのかどうかは言えないが、記録映画で見た農薬による急性中毒の時の症状に似ている。もう一方の巣箱では巣門の前のテラスに 2頭の死骸を見つけた。

一昨年の森林総合研究所などの研究発表によると、セイヨウミツバチに比べニホンミツバチは農薬特にネオニコチノイド系に対し感受性が高い、つまり一桁も薄い濃度でも害を受けるとある。しかもネオニコチノイド系農薬の内でも比較的安全と言われていたジノテフラン(商品名はスタークル)に最も弱いという。今日の無人ヘリが散布したのもこの類だ。写真3は昨年の散布時に撮ったものだが、機体両側の赤いノズルから噴出した霧状の液が白い影のようになって斜め後方に飛ぶのが認められる。このような散布過程で生じたドリフトがしばらく空間に滞留しあるいは拡散していくことを考えると、そら恐ろしくなる。(タイサク)

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