
ビワの実の豊作はミツバチのおかげ
今年は庭のサクランボが不作だったが、それを補うかのようにビワがたくさん実をつけてくれた。あちこちに実が数個ずつ寄り集まり柔らかな橙色が輝いて美しい。朝早くからヒヨドリなどの鳥が 10 羽ほど集団で実をついばみ、またカラスも狙いを定めるかのように飛びまわる。オオスズメバチも甘いのが気に入ってやって来るようだ。一昨年の降雪が厳しいときは積もった雪の重みで小枝が折れ花が枯れるなどで被害が出た。ビワは寒さに弱いので九州や四国などの温暖な地方で生産されている。このマキノの地あたりでビワの生産農家はなく、ビワを高級果実という人もいる。
4 月初めに、庭にただ一本あるビワに袋掛けをした。妻 Y は九州天草のミカン(ポンカン)農家の出だが、昔はビワもいくらか生産していたとかで、ビワの木の扱いには慣れている。袋掛けを言い出したのも彼女だ。私も脚立に上って危なっかしいながらも 100 ほど袋を付けた。まだ実が青く小指の先ほどの小さいときに摘果する。枝先に一塊にある 3 ないし 4 個ずつを一つの市販の紙袋に入れて、口を針金でもってねじって塞いでおくのだ。これで、ビワの実同士が風で擦れたり鳥につつかれる心配がない。ただし作業が面倒なことと実の色がすこし薄いのが欠点。写真1にあるように紙袋が目立つ赤橙色なので、家の前を通る人たちには珍しいのか覗き込みながら通る人もいる。外国からの観光客も写真など取っていき、中には質問する人も。
青梅もそうだが、青く未熟なビワの実やその種子にはシアン化合物アミグダリンが含まれる場合があり、これが体内に入ると猛毒である青酸を発生させると聞く。何十個も食べると健康に害を及ぼす可能性が有るが通常の食べ方では問題にならない。
実も梅雨頃になり色濃く熟れてくると良い香りを出し甘みも増す。わずかにある酸味がうまみを引き立てる。年一度の収穫はやはり楽しみだ(写真2)。近所の人にもいくらかはお裾分けする。ジャムにすると風味が落ちるので作らないがシロップ漬けはいいとかで、Y はたくさん作ってはガラス小ビンに分けて保存し悦に入る。
昨年、初冬にかかる 11 月頃に庭木のビワの白い花が満開になり、甘い香りがハチを誘っていたことを書いた(ミツバチ日記 71)。そのミツバチたちのサービスが実を結ぶことになった。今は亡き働きバチたちの努力をしのんで、出来上がった果実の味をしみじみ楽しむことにした。
セイヨウミツバチの養蜂家はこの初冬の時期にはミツバチを休ませたいらしく、冬を迎えるためにはハチの過重労働を誘うビワの木を嫌うところもあるらしい。私の家の近くにはビワの木があまりない。むしろ蜜源としてはわずかに頼れるところなので、とても有難い存在だ。(尼川タイサク)
