マキノの庭のミツバチ日記(94)

アリの侵入を防ぐ水城

アリの勤勉さは驚くほど。台所はもちろん、家の奥の書斎の机にまで探検者のアリ 1 匹がうろついていたりする。巣までどうやって帰れるのかと、お節介ながらも心配になるほど。昨年の台風の日に、ミツバチの巣箱を補強すべくつっかえ棒をしておいたら、そこを伝わってアリ数十匹が列を作って巣箱への侵入を試みていたこともあった。この場合はアリたちが大雨から避難しようとしたのかもしれないが。

先日、ニホンミツバチ巣箱の入口付近のテラスに、アリの道がいつの間にか開通し物流が盛んになろうとしているのを発見。これはいけないと、台座を新しいものに交換した。古い方には虫の死骸やなにかの卵があり、アリはそこに来ていた。過去にも、アリの侵入が激しくなってミツバチが逃去したことがあった。直ぐにアリ退治を考えたが、市販の薬はネオニコなど殺虫剤が含まれているのが多いので私は使うのを避けることにしている。

城郭の堀割のように巣箱の周りに溝を作ればアリは泳いで渡れない(もっとも、アリの仲間には、切羽詰まれば達者に泳ぐアリがいる)。かつて写真で水盤の上に巣箱を置いたのを見たことがあるが、水面が広いと湿気が強くなるのが気になる。そこで、プランター2 つを買ってきて巣箱の下に並べ、水をはることにした(写真)。また、ボウフラが湧かないようにサラダ油を滴下した。巣箱近くの草木が箱に触っている部分からもアリが渡ってくることがあるので、事前に刈り取っておいた。

アリも集団行動がすごい昆虫だ。昔、兵庫県の山奥で体験したことがあった。それは学童保育の行事で夏のキャンプに付き添って参加したときのこと。雨の上がった夜になって 30 名ほどで夕食のごちそうを広げていた時、明かりを目当てに来たのか突然に現れた無数の羽アリの大集団で宴は大混乱。降りてきたアリで食べ物は覆われ、たちまち黒々となってしまった。でも、これはアリの結婚飛行ということは大人たちには分かったので、直ぐに落ち着きを取り戻した。参加していた子供たちには自然の営みを知る良い経験だったようだ。

ある本によると、アリの結婚飛行は壮大なものがあるらしく、アフリカではクリケットの国際大会が中断に追い込まれた例もあるとか。アリは地域に共存する種 (しゅ)が多い。日没から夜明けまでの時間を分けて、在来の8種それぞれの婚活時間に割り当てがあり(シェアーして)混乱を避けているという観察例が報告されている。割り当てられた時間が来る前に巣を出ようとする焦った若バチを押しとどめる門番の面白い写真もあった。他種との交尾を避けるこの社会的な行動は、エネルギーを浪費し子孫が出来ないという生物学的無駄を避けるためのもので、「生殖隔離」と説明されていた。

アリは小さな体ながらも集団行動と群知能はすごい。分類上同じハチ目(膜翅目) のミツバチにも劣らないかも。このように手ごわい一族のアリの襲撃も、今度の水城のおかげでくい止めることが出来た。(尼川タイサク)

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