
木のうろ(洞)にミツバチの巣
秋雨前線の活発化で日本列島各地に集中豪雨による浸水被害が頻発。当地マキノも激しい雨に見舞われ1時間当たり 22 ミリの雨量が予報に出ていた。その雨上がりの午後、町内の神社に至る道の脇にある一本の木を見に出かけた。目当ての桜の老木の根元近くにくぼみができている(写真1)。はじめは気づかなかったが、そこからの無数の視線を感じハッとして目を凝らした。すると、そのくぼみの中に大勢のマイクロ・エンジェルたち(ミツバチのこと)が小さなつぶらな瞳でこちらの様子をうかがうかのようにしている (写真2)。

大人の掌より少し広いくらいの幅のうろの入口は、奥に行くほど狭くなっているが、隙間を埋める働きバチたちでよく内側が見えない。だが恐らくもっと奥には広い空間があってミツバチの巣板が何枚か収められているのだろう。朝のうち、体を張って豪雨から巣を守ったのだろうか、表にいる働きバチたちの体はまだ濡れていて黒と黄の縞々模様が目立つ。穴の縁にちょっと着いている琥珀色の液滴は垂れてきた蜂蜜と見えたのだが、そっと触ってみると樹脂の硬い塊だった。
私はこれまで立木のうろにできたニホンミツバチの自然巣を見たことがなかった。日ごろ木製巣箱に居ついたミツバチの群や分蜂の時にできる蜂球を見慣れてきたので、本来の木の住処(すみか)に巣を営むミツバチの様子を見るのは新鮮な気持ち。
実は、この住処は、近くの幼稚園に通う虫好きの坊やちゃんが発見したもの。私はその児の親御さんからこの木のことを教えてもらってここに来たのだった。この坊やちゃんには数日前、ミツバチを見たことがないというので、庭に呼んでじっくりと巣箱のミツバチたちを見てもらったばかりだった。それで関心を持ってもらえたのかも。このような目立たぬ巣を見出すその児の観察力にも感心した。
最近のニュースで、岡山市の中心地で、プラタナスの木のうろにニホンミツバチが住み着いているのが見つかり、人が刺されないように木の柵で囲んで保護したという。大人しい種(しゅ)でしかも数が減ってきている希少なミツバチということで、来春の移設までそこに置かれることになったという。
今の世の中、ハチといえばやたら刺すものという固定観念が作られ、ミツバチ、特に大人しいニホンミツバチはとばっちりを受けて危険昆虫として駆除される危険性がある。道端の自然巣も近くの人に誤解され殺虫剤をかけられればお終い。一方、やや目立つところにあるのでスズメバチなどの天敵も来やすい。この群れの今後が思いやられる。
4 日経ってからまた見にいったら、まだ同じところに巣があった。門番役の働きバチたちもこの前に見た時よりは奥に引っ込んでいるので、あまり目立たない。今のところは静観しておくことにした。(尼川タイサク)