マキノの庭のミツバチ日記(100)〈最終回〉

読んでくださってありがとう!

ミツバチ日記が 100 号になった。小織隊長に勧められて「ミツバチまもり隊」の ML に初投稿したのが 2016 年 1 月のこと。途中休みを入れながらも今日まで来た。日記を書くモチベーションは、定年後に飼い始めたミツバチの日ごろの行動の面白さにとりつかれ、つい他の人にも話してみたくなっていたこと。また、ミツバチの目線に立つと違って見える世界も驚きだった。

だが日記を止める時がきた。去年と同じ事を書いているようだし、表現力の衰えは避けられぬ老齢化によるものか。それに、もう書くのに疲れを感じる。

振り返って、日記でよく扱ったテーマの主なものをあげると、1)分蜂(巣分かれ)、2)蜂蜜搾り、3)スズメバチとアカリンダニ、4)記憶とダンス言葉、5) 農薬ネオニコチノイド、といったところだったか。

これまで、文中で農薬(殺虫剤)のネオニコチノイドのことがしつこいと思われた方もいたかも。私がこだわる理由はあった。45 年の間、昆虫(主にハエ)の神経のメカニズムの研究を仕事としてきた。その経験が神経毒の怖さを見過ごせなかった。地域でミツバチが減ってきているという実感もあった。イラストは、その衰退を導いたものは私たち人間ではないかという気持ちを込め、「このままでいいのか、いけないのか?」と悩む蜂ハムレット嬢を描いたもの。昔から、ミツバチは環境の指標ともいわれてきた。

しかし、ひとつの新しいエピソードを紹介しよう。少し前に、ある坊やちゃんが 桜の木のうろにミツバチの自然巣を発見したことをミツバチ日記 97 に書いた。その際に危惧していたことが後に起こった。近所の大人の方が、通学の子供たちへの害を案じて、うろへ殺虫剤をスプレーし駆除したと伝え聞いた。ミツバチはむやみに刺す害虫だとの誤解が、残念ながら広く定着している。だが、その後に予想しなかった展開が・・・。駆除を嘆き生き残りを気遣っていたお母さん(例の坊やの)からメールをいただいたので、内容をかいつまんで紹介をしよう。

<記事(ミツバチ日記 97)を殺虫剤を撒かれた方に届けて読んでもらったら、今後は撒かない意向とのこと。一緒に撒いていた警察官の方なども今は心配して残り少なくなったコロニーを覗きにきたり、近くで道路工事に当たっていた方も他の大型のハチから巣を守ってくださったりなど、ご近所の皆さんのミツバチに対しての意識が良い方向に向いてもらえた。残り少なくなったコロニーだがとりあえずまだ頑張っています・・・>とのこと。これを読んで、久しぶりに熱いものを胸に感じた。世の中、まだ捨てたものではない。

さて、連載を閉じるにあたり、ここまで辛抱強く読んでいただいた「ミツバチまもり隊」の読者に感謝したい。フェイスブックにも転載され、貴重なコメントをいただいたこともあった。

この日記は毎回2人からのチェックを受けてからでないと出せないようにしている。いわゆる査読者が私の思い込みや暴走を引き留めてくれた。その一人は、読書好きの妻 Y、彼女により「難しい」ということで没になった原稿は少なくないが、時には彼女自身の行動が思わぬネタを提供してくれた。隊長小織さんは、環境という広い視点から私が見落としたポイントを指摘してくれたし、毎回の原稿をホームページとフェイスブック上に転載してもらえた。この二人に、改めて感謝をしたい。(尼川タイサク)

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